旧NISAと新NISAの違いと変更点は?成長投資枠とつみたて投資枠についても解説
難易度:
執筆者:
公開:
2024.05.29
更新:
2024.07.19
2024年1月から開始された新NISA制度は、老後の資産形成を支援するために、従来のNISA制度をさらに拡充したものです。新NISA制度では、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2つの枠が設けられ、投資枠の拡大、非課税期間の無期限化、2つの枠の併用が可能になるなど、多くの点で改善されています。
この記事では、新NISA制度の特徴と仕組み、旧NISA制度からの変更点、効果的な活用方法、移行に際しての注意点などについて詳しく解説します。新NISA制度を上手に活用し、賢い資産形成にお役立てください。
新NISAの特徴と仕組み
新NISA制度の大きな特徴は、「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2つの枠を設けている点です。成長投資枠は、年間240万円まで投資でき、株式や投資信託など幅広い商品に投資できます。一方、つみたて投資枠は、年間120万円まで投資でき、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託のみに投資できます。
これらの枠は両方とも運用益が非課税となり、成長投資枠は最大1,200万円、つみたて投資枠は最大1,800万円(合計で最大1,800万円)まで運用できます。運用益の非課税期間に制限がなくなったことから、長期的な資産形成に適した制度設計となっています。
旧NISAと新NISAへの主な変更点
旧NISAと新NISAの主な違いで特に押さえておきたいポイントは、以下の4点です。
ポイント1. 年間投資枠の拡大
旧NISAの一般枠は年間120万円、つみたて枠は年間40万円でしたが、新NISAではそれぞれ240万円、120万円に拡大されます。
ポイント2. 非課税保有期間の無期限化
旧NISAの非課税保有期間は一般枠が最大5年、つみたて枠が最大20年でしたが、新NISAでは無期限となります。
ポイント3. 非課税保有限度額の拡大
旧NISAの非課税保有限度額は一般枠が600万円、つみたて枠が800万円でしたが、新NISAでは成長投資枠が1,200万円、つみたて投資枠が1,800万円(合計で最大1,800万円)に拡大されます。
ポイント4. 二つの枠の併用
旧NISAでは一般枠とつみたて枠の併用ができませんでしたが、新NISAでは成長投資枠とつみたて投資枠を併用できます。
他の変更点詳細は以下の表のとおりです。
旧NISA | 旧つみたてNISA | 旧一般NISA |
---|---|---|
実施期間 | ~2042年末まで (2024年からは新規の買付不可) | 2023年末まで |
制度の併用 | 併用不可 | 併用不可 |
非課税可能総額 | 800万円 | 600万円 |
年間投資上限額 | 40万円 | 120万円 |
投資可能期間 | 最大20年 | 最大5年 |
取扱商品 | 投資信託・ETF ※金融庁の基準を満たし登録のあるもの | 株式・投資信託・ETF・上場投資法人(REIT・インフラファンド) |
非課税期間 | 20年 | 5年 |
出典:金融庁 新しいNISAを参考に筆者作成
新NISAのつみたて投資枠と旧つみたてNISAの違いとは?
旧つみたてNISAと新NISAのつみたて投資枠には、「非課税保有期間」「年間投資枠」「非課税保有限度額」の3つで大きく違いがあります。
新NISA つみたて投資枠 | 旧つみたてNISA | |
---|---|---|
非課税 保有期間 | 無制限 | 20年 |
年間投資枠 | 年間120万円 | 年間40万円 |
非課税 保有限度額 | 1800万円(つみたて投資枠のみ使用の場合) | 800万円(40万円×20年) |
非課税保有限度額が大きくなり、また非課税保有期間も無制限となったことから、こつこつ積立てて資産形成したい人にとってはより使いやすい制度になりました。
新NISAの成長投資枠と旧一般NISAの違いとは?
旧一般NISAと新NISAの成長投資枠の主な違いは以下の通りです。
新NISA成長投資枠 | 旧一般NISA | |
---|---|---|
非課税 保有期間 | 無期限 | 5年 |
年間投資枠 | 年間240万円 | 年間120万円 |
非課税 保有限度額 | 1200万円(つみたて投資枠と合計1800万円) | 600万円(12万円×5年) |
取扱商品 | 株式・投資信託・ETF・上場投資法人(REIT・インフラファンド) ※金融庁の基準を満たし登録のあるもの | 株式・投資信託・ETF・上場投資法人(REIT・インフラファンド) |
新NISAの成長投資枠では、旧一般NISAと比べて非課税保有限度額が大きくなり、非課税保有期間も無制限となったことから、個人投資家に非常に有利な改善がされました。
一方で、対象商品は金融庁の基準を満たしたもの、という制限が加わったため、注意が必要です。対象商品は投資信託協会が対象商品リストを作成しています。
非課税枠の再利用が可能な「簿価残高方式」とは
旧NISAでは一度NISAの枠を消費してしまうと非課税枠が復活しない仕様でした。新NISAでは、「簿価残高方式」という方式で一度消費したNISA枠も、商品を売却したら復活するようになります。「簿価」とは購入時の価格のことです。
例えば、2024年1月に50万円分の投資信託を購入したとします。その投資信託が70万円に値上がりしたので利確しようと2024年の11月に売却しました。この場合、売却時に投資信託が70万円になっていますが、新NISA枠の消費は購入時の50万円分です。そのため、売却後には購入時に消費した50万円分の非課税枠が復活することになります。
このように購入した金融商品の価格変動によらず、購入時の「簿価」によって新NISA枠の残高が決まることから簿価残高方式と呼ばれます。この方式により、投資家は市場の状況に応じて柔軟に投資商品の入れ替えを行うことができ、非課税枠を有効に活用することができるようになりました。
ただし、非課税枠の復活は即日ではなく翌年となること、また、復活するのは非課税枠の総額であって、年間投資枠ではないことに注意が必要です。そのため、この非課税枠の復活が関係してくるのは、非課税枠の総額を使い切ってから、ということになりそうです。
いずれにせよ、新NISA制度は旧NISA制度と比べて、投資枠の拡大、非課税期間の無期限化、二つの枠の併用など、多くの点で改善されています。これらの変更により、新NISA制度は長期的な資産形成により適した制度となっており、多くの投資家にとってメリットのある制度といえるでしょう。
新NISAの口座を旧NISAとは別の金融機関で作る方法
旧NISA口座をお持ちの人は、2024年から同じ金融機関から自動的に新NISA口座が開設されています。そのため、旧NISAと同じ金融機関で新NISA口座を運用する場合は、新規解説の手続きは不要で、すぐに運用を開始できます。
ただし、旧NISAの口座を銀行で持っている場合でも新NISAの口座は証券会社で作ったほうが、購入できる商品のバリエーションや手数料などで有利な点が多いためおすすめです。(参考:新NISA証券会社別の特徴)
この場合、新NISAの口座を銀行から証券会社に移行させる必要があります。新NISAの口座を移行した場合でも旧NISAの口座は維持されるのでご安心ください。
新NISAの金融機関を変更する際は、以下の手順に従って手続きを進めます。
手順1. 変更前の金融機関で「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」の取得
旧NISAの口座がある金融機関、つまり現在の新NISA口座がある金融機関に連絡し、「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」を発行してもらいます。書類を受け取ったら、変更先の金融機関での手続きに移ります。
手順2. 変更先の金融機関で新NISA口座の開設申請
変更先の金融機関で新しいNISA口座の開設を申請します。この際、マイナンバーカードや本人確認書類(運転免許証など)とともに、先に取得した「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」を提出します。
旧NISA同様、新NISAも口座を複数持つことはできません。そのため、「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」を提出することなく新NISA口座を開設申請すると申請が棄却されます。この手順を必ず守るよう注意しましょう。
もし、新NISAの口座がどこにあるかわからない場合は以下の2つの方法があります
確認方法 | 手順 |
---|---|
最寄りの税務署 | 税務署に設置されている「非課税口座の開設先金融機関に関する確認依頼書」に必要事項を記入し本人確認書類と印鑑とともに提出します。その後、新NISAの口座がある金融機関か税務署から連絡が来ます。 |
e-tax | e-Taxのマイページにログインし、「NISA」を選択します。すると「営業所名称」「開設状況」「変更/廃止年月日」が確認できます。 |
注意:新NISA口座の金融機関変更時の注意点
また、口座変更の時期にも注意が必要です。変更を希望する年の前年10月1日から当年9月30日までに手続きを完了させる必要があります。10月1日以降に手続きした場合新NISAの口座が新しい金融機関で使えるようになるのは、翌年になるため注意が必要です。
また、その年に新NISA口座で非課税枠を利用している場合、その年内の金融機関変更はできません。翌年になるのを待ってそれから口座を変更しましょう。
以上が、新NISAにおいて金融機関を変更する際の手続きの流れと注意点です。金融機関変更のタイミングや非課税枠の利用状況に注意しながら、手続きを進めることが重要です。
4.まとめ
新NISAは、旧NISAと比べ、「投資枠の拡大」「非課税期間の無期限化」「成長投資枠・つみたて投資枠の併用」「非課税枠の復活・再利用」など、多くの点で個人投資家に有利な制度に生まれ変わりました。
総額1800万円となったことから、「老後2000万円問題」の対策としても十分な金額が運用できるようになりました。そのため、資産運用する際の第一選択肢として大いに活躍してくれそうです。
新NISAの仕組みを理解して、うまく資産運用にご活用ください。
投資のコンシェルジュ編集部
MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
関連記事
関連する専門用語
NISA
「Nippon Individual Saving Account」の略(少額投資非課税制度)。 日本における株式や投資信託の投資金における売却益と配当への税率を一定の制限の元で非課税とする制度。 金融機関において、この制度が適用される非課税口座を、通常の取引口座とは別に開設する必要がある。
つみたてNISA
少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度。 毎年40万円を上限として一定の基準を満たした投資信託に積立投資することが可能。 投資をした年から最長20年間の間に得た分配金と売却益(譲渡益)が非課税となる。 非課税で投資できる総額は最大800万円(年間40万円×20年)。
ジュニアNISA
未成年の「少額投資非課税制度(NISA)」。ジュニアNISA口座で投資をすると、利益や、配当金・分配金にかかる税金が0%(非課税)となる。年間投資上限額は80万円(5年で最大400万円)。2023年で新規受付は停止。
投資信託
投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品。 その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組み。 集めた資金をどのような対象に投資するかについては、投資信託ごとの運用方針に基づき専門家が行う。