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株の希薄化の仕組み

株の希薄化の仕組みと保有株への影響をわかりやすく解説!

難易度:

執筆者:

公開:

2025.01.17

更新:

2025.02.19

基礎知識オルタナティブ投資

目次

株の希薄化が起きる3つの主なケース

資金調達のための新株発行

ストックオプションや従業員持株制度

株式交換

株の希薄化がもたらす個人投資家への影響

1株あたりの利益(EPS)の低下

需給バランスの悪化による影響

既存株主の所有権割合の低下

株の希薄化が必ずしも悪いとは限らない理由

配当金は希薄化の影響を受けない

まとめ:株の希薄化を正しく理解して賢い投資を

「株の希薄化」という言葉、どこかで耳にしたことはありませんか?ニュースや企業の発表でよく見かけるこの言葉、実は株式投資においてとても重要なポイントの一つです。

簡単に言うと、株の希薄化とは、企業が新しい株式を発行することで、既存株主が保有する1株あたりの価値や所有割合が薄まる現象を指します。一見するとネガティブに感じるかもしれませんが、必ずしも悪いことばかりではありません。たとえば、配当金のように1株ごとに計算されるものには、影響が少ない場合もあります。

この記事では、「株の希薄化」とは何かをわかりやすく解説し、その仕組みや個人投資家への影響、さらにはどう向き合えば良いかまで詳しくお伝えします。これから株式投資を続けていく上で役立つ知識を一緒に学んでいきましょう。

株の希薄化が起きる3つの主なケース

株の希薄化が起きるのはどのような場面なのでしょうか?代表的な3つのケースを見ていきます。

資金調達のための新株発行

例えば、架空の企業「ABCテクノロジーズ」を例に考えてみましょう。この企業は新しいプロジェクトを開始するために追加で1億円の資金が必要になりました。そこで、同社は100万株の新株を1株あたり100円で発行することを決定しました。

発行前、ABCテクノロジーズの発行済み株式数は1,000万株で、既存株主は会社全体の100%を所有していました。ここで、ある個人投資家の佐藤さんが同社の株式を50万株保有していたとします。

新たに100万株が発行された結果、発行済み株式数は合計で1,100万株となります。増資に参加しなかった佐藤さんの所有割合は次のように変化します:

  • 発行前:50万株/1,000万株=5%
  • 発行後:50万株/1,100万株=約4.545%

つまり、佐藤さんの持ち株比率は約0.455%ポイント(5%から約4.545%へ)減少しました。これが新株発行により株の希薄化が発生する仕組みです。

ストックオプションや従業員持株制度

例えば、架空の企業「XYZソリューションズ」を例に考えてみましょう。この企業は、優秀な人材を引き留めるため、従業員に対してストックオプションを発行しました。このストックオプションにより、従業員は一定の条件を満たすと1株あたり50円で合計50万株を購入できる権利を得ました。

ストックオプションがすべて行使された場合、XYZソリューションズの発行済み株式数は1,000万株から1,050万株に増加します。この場合、既存株主の所有割合は次のように変化します。

例えば、個人投資家の田中さんがXYZソリューションズの株式を10万株保有していた場合:

  • 発行前:10万株/1,000万株=1%
  • 発行後:10万株/1,050万株=約0.952%

田中さんの持ち株比率は約0.048%ポイント(1%から約0.952%へ)減少しました。これが、ストックオプションの行使による株の希薄化の例です。

株式交換

次に、架空の企業「LMNフーズ」が、ある食品関連企業「オーガニックファーム」を買収する場合を考えます。LMNフーズは買収の対価として自社株式を新たに500万株発行し、オーガニックファームの株主に提供しました。この結果、LMNフーズの発行済み株式数は2,000万株から2,500万株に増加しました。

ここで、既存株主の鈴木さんがLMNフーズの株式を20万株保有していたとします。鈴木さんの所有割合は以下のように変化します:

  • 発行前:20万株/2,000万株=1%
  • 発行後:20万株/2,500万株=0.8%

鈴木さんの持ち株比率は0.2%ポイント(1%から0.8%へ)減少しました。

このように、企業が他社を買収する際に自社株式を対価として提供する株式交換においても、既存株主の所有割合が低下する(希薄化する)ことがあります。

株の希薄化がもたらす個人投資家への影響

株の希薄化は、企業が新株を発行することで既存株主の利益や影響力に変化をもたらします。この現象は、短期的には個人投資家にとってデメリットが生じる場合もありますが、企業の成長戦略次第ではポジティブな結果を生むこともあります。株の希薄化が個人投資家に与える影響を、具体例を交えながら3つの観点から解説します

1株あたりの利益(EPS)の低下

新株発行によって発行済み株式数が増えると、企業の純利益を既存の株式で分割することになるため、1株あたりの利益(EPS)が減少します。例えば、ある企業の年間純利益が1,000万円で発行済み株式数が10万株の場合、1株あたりの利益(EPS)は「1,000万円 ÷ 10万株 = 100円」となります。ここで、新株を5万株発行して発行済み株式数が15万株になると、EPSは「1,000万円 ÷ 15万株 = 約66.67円」と減少します。このようにEPSが減ると、投資家にとって「企業の収益性が低下した」というシグナルと受け取られることがあり、株価が下落するリスクが生じます。

需給バランスの悪化による影響

市場に供給される株式数が増えると、需給バランスが崩れ、供給過多により株価が一時的に下落するリスクが生じます。特に、新株発行によって市場に新たな株式が大量に供給された場合、既存の需給関係が変化し、価格調整が行われる可能性があります。また、株式の流通量が増えることで市場の流動性が向上し、投資家が売買を行いやすくなる場合がありますが、このこと自体が株価の上昇に直結するわけではありません。需給バランスの変化は、短期的には株価の変動要因となるため、特に新株発行直後は注意が必要です。

既存株主の所有権割合の低下

新株発行により、既存株主の所有権割合が薄まり、議決権や配当の影響力が減少することがあります。例えば、あなたがある企業の株を1,000株持っていて、発行済み株式数が1万株だった場合、所有割合は「1,000 ÷ 1万 = 10%」です。しかし、企業が新株を5,000株発行して発行済み株式数が1万5,000株になると、所有割合は「1,000 ÷ 1万5,000 = 約6.67%」に低下します。この減少により、配当金の取り分が減ったり、株主総会での議決権が弱まる可能性があります。このため、企業の重要な意思決定に対する影響力が制限される場合があります。

株の希薄化が必ずしも悪いとは限らない理由

株の希薄化は、一見するとネガティブな側面が目立ちますが、状況によってはポジティブな効果をもたらすこともあります。特に、企業が株の希薄化を伴う資金調達で得た資金をうまく活用した場合、その成果が株主にも還元される可能性があります。例えば、新株発行による資金を新規事業の立ち上げや市場の拡大、研究開発に投資することで、企業の収益性が向上し、最終的には株価が上昇することが考えられます。新しい技術の開発や有望な市場への進出が成功すれば、企業の成長が加速し、それが株主の利益にもつながるでしょう。そのため、短期的な株価の変動だけに注目するのではなく、企業がどのような成長戦略を描いているのかを見極めることが重要です。株の希薄化を伴う資金調達は、企業の成長を後押しするための一つの手段と捉えることができます。

配当金は希薄化の影響を受けない

配当金額は希薄化によって影響を受けません。企業が新株を発行して株式数が増加すると、1株あたりの利益(EPS)が減少し、株主への利益還元に影響が出るのではないかと考えがちですが、実際には配当金の総額は企業の方針や財務状況に基づいて決定されます。そのため、新株発行によって株式が希薄化しても、企業が配当金総額を維持する限り、株主全体に分配される配当金額は変わりません。ただし、1株あたりの配当金(DPS)は株式数の増加に応じて調整されるため、結果として既存株主が受け取る配当額が減少することがあります。希薄化による影響は1株あたりの指標に限定され、企業が安定した配当政策を維持していれば、配当金額そのものには直接的な影響はありません。

まとめ:株の希薄化を正しく理解して賢い投資を

株の希薄化は、投資初心者にとって理解しづらいトピックかもしれませんが、正しい知識を持つことで、冷静な投資判断が可能になります。企業の発行計画や資金の使い道をチェックし、リスクとリターンのバランスを見極めましょう。この記事が、皆さんの投資判断の一助となれば幸いです。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

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株の希薄化

株の希薄化とは、会社が新株を発行するなどして発行済み株式数が増えることで、既存株主の持ち分が相対的に減少する現象です。 例えば、新たな株式発行やストックオプションの行使により、1株あたりの利益(EPS)が減少する可能性があります。 希薄化は、企業が資金調達やM&Aを行う際に起こることが多く、既存株主にとっては利益分配が減る可能性があるため、注意が必要です。

資金調達

資金調達とは、企業が事業運営や成長のために必要な資金を集める活動を指します。方法としては、株式発行によるエクイティファイナンス、社債発行や銀行からの借入によるデットファイナンスがあります。それぞれの方法にはメリット・デメリットがあり、企業は資金コストや返済義務などを考慮して選択します。

発行済み株式数

発行済み株式数とは、企業が発行した株式の総数を指します。この数には、上場市場で取引される株式と企業が保有する自己株式が含まれます。発行済み株式数は、EPSやDPSの計算において重要な要素となります。

新株発行

新株発行とは、企業が新たに株式を発行して資金を調達する行為です。通常、既存株主への影響を最小限に抑えるために、時価近くの価格で発行されます。発行された株式は既存株主の持ち分を希薄化させる可能性がありますが、調達した資金は事業拡大や債務返済などに活用されます。

需給バランス

需給バランスとは、株式市場における需要(買い注文)と供給(売り注文)の均衡状態を指します。需給バランスが崩れると、株価の変動要因となります。例えば、買い注文が多ければ株価は上昇し、売り注文が多ければ株価は下落します。

配当政策

配当政策とは、企業が利益をどのように配分するかを決定する方針を指します。例えば、利益を配当として株主に還元するか、再投資して事業拡大を図るかなどがあります。配当政策は企業の成長性や株主還元姿勢を反映するものです。

リスクシミュレーション

リスクシミュレーションとは、投資判断において発生し得るリスクやその影響を予測する手法です。モンテカルロ法などの数学的手法を用い、様々なシナリオで結果を分析します。これにより、投資家はリスクを定量的に評価し、意思決定に役立てます。

株式交換

株式交換とは、親会社となる企業が自社の株式を対価として対象会社の発行済株式をすべて取得し、対象会社を支配することで、グループ企業を形成・再編する方法です。主に、M&Aの手段やホールディングス化を目指すために行われます。株式交換のメリットとしては親会社は自社株式を発行するだけでよいので買収資金が不要であることや、買収した後も対象企業は別法人という扱いになるので早急な経営統合を行う必要がないことなどがあります。 一方でデメリットとしては、自社株式を新規に発行するため、既存株主の持ち分が希薄化する可能性があります。また、親会社の1株当たりの利益が減少して市場評価が下がり株価が減少するリスクがあることや、親会社の株主構成が変化することなどが挙げられます。

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