
VIX指数とは?投資家が知るべき市場の恐怖指数
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公開:
2025.03.13
更新:
2025.03.13
投資の世界には、市場の「恐怖度合い」を測る指標が存在します。それが VIX指数(恐怖指数) です。株式市場が大きく揺れるとき、VIX指数は急上昇し、投資家の不安心理を映し出します。しかし、VIX指数の動きを理解すれば、投資のリスクを管理し、市場の転換点を見極めるヒントを得ることができます。本記事では、VIX指数の基本的な仕組みから、株式市場との関係、実際の投資戦略まで詳しく解説。市場の波を乗りこなすための知識を身につけましょう。
本記事では、VIX指数の基本的な仕組みや計算方法を整理し、実際の市場とどのように関係しているのかを詳しく解説します。また、過去の市場の動きとVIX指数の変動を照らし合わせながら、実際に投資判断にどのように活用できるのかを具体例を交えて紹介します。
さらに、VIX指数が高まったときに取るべきリスク管理の方法や、低いときに注意すべきポイントについても解説。市場の変動が大きくなった際に冷静に対応できるよう、VIX指数を一つの判断材料として活用するための知識を得ることができます。投資におけるリスクをより適切に把握し、長期的な資産形成に活かしていくための視点を提供します。
VIX指数とは?
VIX指数(CBOE Volatility Index)は、今後30日間の米国株式市場(S&P500指数)の予想変動率を示す指標です。シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P500のオプション価格をもとにリアルタイムで算出し、市場の不安度を数値化しています。
VIX指数が示す意味
VIX指数の数値が高い場合、投資家は今後、市場が大きく動くと予想し、不安が高まっている状態を示します。反対に、数値が低い場合は市場は安定していると投資家が考えていることを意味します。市場の不安が急激に高まるとVIX指数は大きく上昇するため、恐怖指数とも呼ばれています。
VIX指数の計算方法
VIX指数は、S&P500のオプション価格(投資家が保険のように使う金融商品)をもとに算出されます。計算の流れは以下のようになります
- 満期が約30日に近い複数のオプション価格(コールオプション&プットオプション)を集計する。
- これらのデータを使い、ブラック・ショールズモデルなどの理論を用いて「予想される市場の変動率」を計算する。
オプション価格は市場参加者の「価格がどのくらい動きそうか」という予想を反映しているため、VIX指数は投資家が感じている未来の不確実性を直接表す指標になっています。
VIX指数の役割
VIX指数は市場のリスクを測る重要なツールとして、1993年の公表以来、金融業界で広く活用されています。特に、リスク管理や投資判断の参考として注目されています。
VIX指数と株式市場の関係は?:ボラティリティとのつながりを簡単に解説
VIX指数は、株式市場の変動(ボラティリティ)と逆の動きをすることで知られています。つまり、株価が下がるとVIX指数は上がり、株価が上がるとVIX指数は下がるという関係があります。統計的にも、1993年から2023年末までのデータによると、S&P500指数とVIX指数の相関係数は-0.667と算出されており、この逆相関の関係がはっきりと示されています。
この関係は直感的にも理解しやすく、株価が急落すると投資家の不安が高まり、市場の先行きが読みにくくなるため、VIX指数が急上昇します。反対に、株価が安定していると市場の安心感が広がり、VIX指数は低い状態が続きます。
VIX指数の水準と市場の状態
VIX指数の値によって、市場の心理状態を以下のように判断できます:
- 20未満→市場は安定(青信号)
- 20以上→市場にやや不安感が広がっている(黄信号)
- 30以上→投資家の恐怖感が強まり、市場が危険な状態(赤信号)
例えば、2022年9月末から10月前半にかけて米国株が大きく下落した際、VIX指数は30以上で推移し、市場の不安が非常に高まっていたことがわかります。このように、VIX指数の急上昇は株式市場の不安定さを示す重要なサインになります。
VIX指数を活用するメリット
VIX指数の動きを見ることで、現在の市場が「リスクオン(積極的に投資する局面)」なのか「リスクオフ(リスク回避の局面)」なのかを判断する手助けになります。投資家にとって、日々の市場分析にVIX指数を取り入れることで、リスクを管理しやすくなります。
VIX指数とマクロ経済・金融政策の関係:不確実性とのつながり
VIX指数の動きは、景気や金融政策の変化と深く関係しています。市場のボラティリティ(変動の大きさ)は、中央銀行の政策や経済の不確実性によって影響を受けることが多いのです。
金融緩和とVIX指数の低下
歴史的に見ると、低金利や金融緩和(お金を市場に増やす政策)が続くと、市場の安定感が高まり、VIX指数は低い状態が続く傾向があります。
例えば、2010年代半ばから後半にかけて、世界の主要な中央銀行(米連邦準備制度理事会〈FRB〉や欧州中央銀行〈ECB〉など)が超低金利政策や量的緩和(QE)を続けた時期、株価は緩やかに上昇し、VIX指数も低水準でした。特に2017年にはVIXが一桁台を記録し、歴史的に低いボラティリティが続きました。これは、景気が安定し、投資家が市場に安心感を持っていたためです。
金融引き締めとVIX指数の上昇
しかし、金融政策が引き締め(利上げや市場からお金を減らす政策)に転じると、市場の不安が高まり、VIX指数は急上昇することがあります。
例えば、FRBが利上げを進めた2018年初頭には、市場の不安が高まり、VIXショック(Volatility爆弾)と呼ばれる株価の急変動が発生しました。この背景には、利上げの影響に加え、米中貿易摩擦などの経済的な不確実性があったためです。
経済危機とVIX指数の急上昇
経済が大きな危機に直面すると、VIX指数は急激に上昇します。例えば、2020年のコロナ・ショックでは、パンデミックによる市場の混乱によりVIX指数が一時85まで急騰しました。しかし、その後、FRBの緊急利下げや過去最大規模の金融緩和、さらに各国政府の大規模な経済対策が実施されたことで市場は徐々に落ち着きを取り戻し、わずか2か月後の5月にはVIX指数は30以下に低下しました。
一方、2008年のリーマン・ショックでは、各国政府の対応が遅れたことも影響し、VIX指数が平常水準に戻るまでに1年以上を要しました。このように、経済危機が発生した際のVIX指数の動きは、政府や中央銀行の対応の速さによって大きく左右されるのです。
VIXが急騰したときの投資戦略:冷静な対応がカギ
VIX指数が急上昇する局面では、市場に恐怖感が広がり、株価が大きく下落する傾向があります。このような状況では、ポートフォリオの防御と冷静な判断が重要です。投資家が取るべき戦略には、大きく分けて「リスクヘッジ」と「逆張りのチャンスを活かす方法」があります。
リスクヘッジ(市場の下落に備える)
市場が混乱しているときは、保有資産の価値が大きく下がるリスクがあります。そのため、株価の下落リスクをカバーする手段(ヘッジ)を取ることが有効です。具体的には以下のような方法があります。
VIXコールオプションの購入
VIXは市場の不安が高まると上昇するため、VIXに連動するコールオプションを買うことで、VIXが急騰した際に利益を得られます。これは、地政学リスクや突然のショックに備える手段として有効です。
S&P500プットオプションの購入
S&P500のプットオプションを買うことで、株価の下落で利益が出る仕組みになります。景気後退や企業業績の悪化によるじわじわとした株価下落に対しては、こちらのほうが適したヘッジ手段になることもあります。
ヘッジをする際には、コストやVIXの上昇がどれくらい続くかを見極めることが大切です。
VIX急騰時の逆張り(チャンスを活かす)
VIXが急上昇した後、市場が落ち着きを取り戻すと、VIXは下がり、株価が回復する傾向があります。そのため、経験豊富な投資家の中には、VIX急騰を市場の恐怖がピークに達したサインと捉え、逆張りで株を買い増すケースもあります。
「VIXが極端に高いときは株の買い場」
市場が極端に悲観的になると、その後回復しやすい傾向があります。VIXが極端に高いときに株を買うのは、長期的に見ると有効な戦略になり得ます。
VIX先物やVIX関連ETFの売却(ショート)
VIX指数は通常、長期的には平均値(約20前後)に戻る傾向があります。そのため、VIXが異常に高騰したときにVIX先物やVIX関連ETFを売る(ショートする)ことで、VIXが下がる過程で利益を得る戦略も考えられます。
例えば、株式市場が暴落した直後にVIX関連商品を売り建て、市場の回復に伴うVIX低下で利益を狙う手法があります。これは恐怖のピークで冷静にリスクを取れる投資家にとって有効な戦略です。
VIXショート戦略のリスク
VIXを売る戦略には、大きなリスクが伴います。
実際に、2018年2月の「ヴォラショック」では、VIXが急騰したことで、多くの投資家が低ボラティリティ(VIXが低い状態)に賭けていたポジションを損切りせざるを得なくなり、市場全体が大混乱に陥りました。このように、VIXショート戦略は、突然の急騰によって壊滅的な損失を受ける可能性があるため、慎重な資金管理が必要です。
VIXが低迷しているときの投資戦略:市場の静けさに潜むリスク
VIX指数が異常に低い状態が続くと、市場は平穏そのものに見えます。しかし、これは投資家がリスクを過小評価している「慢心の状態」とも考えられます。歴史的に、VIXが極端に低いと、その後に市場が急変動することが多いため、むしろ警戒すべき局面です。
VIXが低迷しているときの注意点
市場が極端に安定しすぎていると、その後に急激な変動が起こる可能性が高まります。このような状況では、投資家の警戒心が薄れ、リスクが過小評価されていることが多いため、市場の不安定要素が見落とされがちです。実際、低ボラティリティの局面は「次の大きな波」の前兆となることが多く、突発的な市場の変動に備える必要があります。そのため、VIX指数が異常に低いときこそ、今後の相場の動きを慎重に見極め、適切なリスク管理を行うことが重要です。
低ボラティリティ時の戦略
低ボラティリティ時の投資戦略で代表的なものは以下の3つです
- ヘッジを強化する
- VIXの平均回帰を見越した投資
- プロ向けの高度な戦略:裁定取引の実施
ヘッジを強化する
VIXが低い(=市場が平穏)うちに、将来の市場の急変に備えるのが賢明な戦略です。
具体的には、以下のような方法があります。
- S&P500プットオプションの購入(株価が下落したときに利益が出る保険)
- VIX先物やVIXコールオプションの購入(VIXが上がることで利益が出る商品)
- ポートフォリオの一部をキャッシュ(現金)にしておく(暴落時に買いのチャンスを狙う)
特に、VIXが低い時期はオプションの保険料が割安なため、比較的安くヘッジを仕込めるメリットがあります。
VIXの平均回帰を見越した投資
VIX指数は長期的に見ると、一定の水準(約20前後)に戻る傾向があります。そのため、VIXが異常に低いときは、「いずれ上昇する」と考え、VIX関連の商品を少額で買っておく戦略も有効です。
プロ向けの高度な戦略:裁定取引の実施
一部の経験豊富な投資家は、VIX先物と個別株オプションの価格差を利用した裁定取引(価格のズレを活かした利益追求)を行うこともあります。ただし、これには専門的な知識と高度な取引スキルが必要です。
VIX関連商品のリスク
VIXに連動するETFや先物は、特殊な価格変動の仕組み(コンタンゴによる価格の減価)を持つため、長期保有には向きません。そのため、VIX指数を直接売買するのではなく、あくまで市場の「警報装置」として活用し、投資の判断材料にするのが合理的な考え方です。
過去のケーススタディ:VIX指数の変動と市場への影響
VIX指数(恐怖指数)の大幅な変動が市場にどのような影響を与えたのか、代表的な事例を振り返ります。
2008年:リーマン・ショック(世界金融危機)
2008年9月、米大手証券会社リーマン・ブラザーズが破綻し、世界的な金融危機が発生しました。
VIXの動き
- 株式市場は大暴落し、投資家の不安が急激に高まりました。
- 10月にはVIX指数が過去最高の96.40まで上昇しました(通常は20前後)。
- これは、市場が極度の恐怖に包まれたことを示しています。
市場の影響
- S&P500指数はピーク時から約半値まで暴落。
- 多くの投資家が大きな損失を被りました。
- VIX指数が50を下回るまで数ヶ月、平常時の水準に戻るまで1年以上かかりました。
対応策
- 各国中央銀行はゼロ金利政策や銀行救済策を実施。
- これにより、市場の混乱は徐々に収まりました。
2020年:コロナ・ショック(新型コロナウイルス危機)
2020年初頭、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界経済が急ブレーキ。企業活動が停滞し、株式市場が急落しました。
VIXの動き
- S&P500指数は1ヶ月で30%以上の下落。
- 3月にはVIX指数が85.47まで上昇し、2008年の金融危機時と同じ水準に達しました。
市場の影響
- 短期間で大きく下落したものの、2008年ほど長引きませんでした。
対応策
- FRB(米連邦準備制度)は3月中旬に緊急利下げと無制限の量的緩和(QE)を実施。
- 米国議会も巨額の財政刺激策を可決。
- その結果、市場は比較的早く回復し、VIX指数は2ヶ月後(5月)には30を下回る水準まで低下。
- 通常水準(20未満)に戻るまで「約1年」かかりました。
まとめ
市場の動きを完全に予測することはできませんが、VIX指数を活用することで、市場の不安を捉え、適切なリスク対策を講じることができます。
- 現在のポートフォリオは市場の変動に対応できる設計になっているか?
- VIX指数をどのように投資戦略に組み込めば、リスクを抑えながら資産を運用できるか?
- 効果的なリスク管理の具体的な手法とは?
これらの疑問の答えは、一人ひとりの資産状況や目標によって異なります。資産運用の専門家に相談することで、VIX指数を活かした実践的な投資戦略を構築することが可能です。
市場の変動に適切に対応し、長期的に安定した資産運用を目指すために、専門家の意見を取り入れてみるのも一つの選択肢です。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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