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保険節税

保険は節税に使える?保険料控除の仕組みと計算方法を事例付きでわかりやすく解説

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執筆者:

公開:

2024.05.03

更新:

2024.05.08

掛け捨て保険貯蓄型保険

目次

生命保険料控除とは?

生命保険料控除の概要

新生命保険料控除・旧生命保険料控除の限度額

生命保険料控除の計算式

旧制度の生命保険料控除

新制度の生命保険料控除

生命保険の種類

「一般生命保険控除の対象」となる保険

介護医療保険料控除の対象となる保険

個人年金保険料控除の対象となる保険

損害保険のうち生命保険料控除の対象となるもの

生命保険料控除の申請方法

年末調整の手続き

確定申告の手続き

保険商品の選び方の例

参考:生命保険の他に控除の対象となるもの

節税を目的として保険加入を考える際の注意点

まとめ

「保険に加入すると節税効果がある」ということを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?年末調整や確定申告の記載事項に、生命保険料控除の項目があることから分かる通り「生命保険」「介護医療保険」「個人年金保険」などで支払った保険料が、所得税や住民税から控除される仕組みがあります。これを生命保険料控除といいます。

生命保険料控除は加入している保険の種類と支払っている保険金額によって控除額が変わってくる少し複雑な仕組みです。そのため、節税できると思って保険に加入したものの控除の対象にならなかったということにもなりかねません。

本記事では、生命保険控除とその仕組や控除額の計算方法について説明するとともに、控除の対象となる保険の種類と、組み合わせ方の例を説明します。

生命保険料控除とは?

生命保険料控除とは、民間の保険会社で独自に加入した生命保険や介護医療保険、個人年金保険の保険料の一部を所得から控除できる制度です。この制度を利用することで、所得税や住民税の負担が軽減されます。

生命保険料控除の概要

生命保険料控除は、1月1日から12月31日までの1年間に支払った保険料の一部が、所得控除の対象となります。対象となる保険は、一般の生命保険、介護医療保険、個人年金保険。

保険料控除には、2012年1月1日以降に締結した契約を対象とする「新制度」と、2011年12月31日以前の契約を対象とする「旧制度」があります。新制度では、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3つに区分されています。「新制度」と「旧制度」では、保険料控除の計算式が異なります。

以下では、新制度を「新生命保険料控除」旧制度を「旧生命保険料控除」として説明します。

新生命保険料控除・旧生命保険料控除の限度額

生命保険料控除について、所得税と住民税の控除額にはそれぞれ限度額が設定されています。新制度と旧制度によって保険の区分と限度額が異なっているため、新制度と旧制度の保険の双方に加入している場合は、それぞれ加入時の条件で合算して計算を行います。

旧保険料控除所得税控除額住民税控除額
旧一般生命保険料控除50,00035,000
旧個人年金保険料控除50,00035,000
新保険料控除所得税控除額住民税控除額
新一般生命保険料控除40,00028,000
新個人年金保険料控除40,00028,000
新介護医療保険料控除40,00028,000

所得税は新旧合算して12万円まで、住民税は新旧合算して7万円まで生命保険料控除に参入可能です。

所得税は年間の予定所得金額から課税金額を計算し、毎月、源泉徴収にて事前徴収を行い、確定申告時期にて正しい税額を納付するものです。それに対して住民税は、前年の総所得金額から住民税の控除として定められている金額を差し引いて、税率計算により算出した金額を当年分割して支払っていくという形です。そのため、所得税・住民税それぞれについて独自の限度額と計算式が設けられています。

生命保険料控除の計算式

生命保険料控除は新制度と旧制度でそれぞれ計算方法が変わってきます。ここではそれぞれの保険料控除について解説します。

旧制度の生命保険料控除

旧制度の生命保険料控除額は所得税が最大5万円、住民税が最大3万5千円ずつ、旧一般生命保険料控除と旧個人年金保険料控除に適用されます。

旧制度の所得税控除額と住民税控除額の計算方法は以下の通りです。

旧制度の所得税の生命保険料控除計算式

年間の支払保険料等所得税控除額
25,000円以下支払保険料等の全額
25,000円超 50,000円以下支払保険料等×1/2+12,500円
50,000円超 100,000円以下支払保険料等×1/4+25,000円
100,000円超一律50,000円

旧制度の住民税の生命保険料控除計算式

年間の支払保険料等住民税控除額
15,000円以下支払保険料等の全額
15,000円超 40,000円以下支払保険料等×1/2+7,500円
40,000円超 70,000円以下支払保険料等×1/4+17,500円
70,000円超一律35,000円

以下グラフの通り、保険料の金額が大きくなるにつれて、控除額の変化は小さくなっていきます。

最大の控除額を得られるのは、年間の支払保険料が10万円を超え、所得税が5万円、住民税が3万5千円の合計8万5千円の控除を受けられたときです。

新制度の生命保険料控除

新制度の生命保険料控除額は所得税が最大4万円、住民税が最大2万8千円ずつ、新一般生命保険料控除と新個人年金保険料控除、新介護医療保険控除のそれぞれに適用されます。 そのため、3つを合わせた最大額は、所得税12万円、住民税8.4万円の控除額となり、旧制度よりも控除最大額は大きくなっています。

新制度の所得税の生命保険料控除計算式

年間の支払保険料等所得税控除額
20,000円以下支払保険料等の全額
20,000円超 40,000円以下支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超一律40,000円

新制度の住民税の生命保険料控除計算式

年間の支払保険料等住民税控除額
12,000円以下支払保険料等の全額
12,000円超 32,000円以下保険料×1/2+6,000円
32,000円超 円以下保険料×1/4+14,000円
56,000円超一律28,000円

以下グラフの通り、旧制度と同様に新制度も保険料の金額が大きくなるにつれて、控除額の変化は小さくなっていきます。

最大の控除額を得られるのは、年間の支払保険料が8万円を超え、所得税が4万円、住民税が2万8千円の合計6万8千円の控除を受けられたときです。

生命保険の種類

ここまで、生命保険料控除の控除額について説明してきました。ここでは、具体的に、生命保険にはどのようなものがあり、どの生命保険料控除該当するのかをご説明します。

以下は現在加入した場合の、つまり新制度での控除の対象を基準に分類しています。旧制度については保険の種類ごとに付記していますのでご参考にされてください。

「一般生命保険控除の対象」となる保険

一般生命保険料控除の基本保障は「死亡保障」です。保険料の積み立てができる保険は、基本的には死亡保障が付いていて、このような保険は「一般生命保険控除」に分類されます。

死亡保険(新制度・旧制度:一般生命保険料控除)

死亡保険は、働き手の家族が急な不幸に見舞われたとき、残された家族が生活に困らないよう、リスクヘッジのために入ります。残された家族が多ければ多いほど、保険金額が多くなるのは目に見えると思いますが、世帯主の収入によっても、その生活を維持するため、入るべき金額が家庭によって違ってきます。その金額を知るために、ライフプラン設計が必要になります。

加入保険の中では、比較的、独身の方は保険料のボリュームが少なく、家族が多くなればなるほど、ボリュームが大きくなります。

扶養者が多い方ほど、この死亡保障の生命保険料控除の金額が大きくなる傾向があります。

給付要件は、被保険者が死亡したら受け取れる保険。医療保険等のように給付要件がいろいろあるわけではなく、被保険者の死後の葬儀費用・残されたご家族の生活費・教育費に充てることを目的とした保険です。相続対策に活用されることもあります。

学資保険(新制度・旧制度:一般生命保険料控除)

お子様の教育費(主に大学費用)の積立の為に加入する保険です。

学資保険は死亡保障がついていることが忘れられがちな保険です。学資保険は積立期間であれば積立てた金額がそのまま死亡保障となっています。そのため、途中で契約者が亡くなった場合は、元本が全て死亡保障として払われます。そのため学資保険も「一般生命保険料控除」となります。

終身保険(新制度・旧制度:一般生命保険料控除)

死亡保険の一つで、一生涯に渡って保障される死亡保障です。積立型のものがほとんどで、保険による積立商品として加入されることもあります。

変額保険(新制度・旧制度:一般生命保険料控除)

終身保険の場合がほとんどですが、保険料の積立が出来る保険で、積立部分の運用を投資信託を用いて運用しています。変額保険にすることで、運用により解約返戻金の変動リスクを負うかわりに、保険料が安く死亡保障を受けられるのがメリットです。

収入保障保険(新制度・旧制度:一般生命保険料控除)

世帯主の定年までの間、死亡リスクに対して、家族の生活費の補てんとして加入されているケースが多いです。現代は妻も仕事をしていることが多く、妻も加入している場合も増えています。また、住宅ローンの死亡リスクに対する、団体信用生命保険の代わりに、生命保険を用いて対策する場合も、この保険を使います。

定期保険(新制度・旧制度:一般生命保険料控除)

保障の期間が決められた死亡保障です。掛け捨てで、積立金がないケースがほとんどなので、比較的保障に対して保険料が安く、大きな金額の保障を決まった期間欲しいときに、適した保険です。働き盛りの現役世代が、家族の生活費として必要な金額を算出し、その金額に合わせて加入する場合が多いです。

また、現役の経営者が、急な不幸に見舞われた時に備えて、スムーズな事業承継を行うために、加入する場合もこの保険を使います。

低減定期保険(新制度・旧制度:一般生命保険料控除)

世帯主が万が一不幸に見舞われた時、子供の教育費を補てんする保険として加入されている方が多い保険です。加入時が一番保障金額が多く、次第に少しずつ保障が低減していく保険です。時の経過とともに、子供達は大きくなり、今後必要な教育費は少しづつ減っていくので、低減型を使います。

介護医療保険料控除の対象となる保険

介護医療保険料控除の対象となる保険は、旧制度では一般生命保険料控除でしたが、新制度では介護医療保険料控除に変更されています。

国の制度を使うと、健康保険により医療費の3割負担の治療費となり、正社員なら休業手当などを受け取れます。金額が高額になれば高額療養費制度を使い、一定金額までの支払いで済みます。

しかし、この制度が使えるのは治療費のみとなり、個室料金や休業手当は6割ほどしかないので、入院中の家族の生活費としては不足する上に、入院に係る雑費(差額ベット代・滞在に係る着衣代・お見舞い返しなどの費用他)を手出しする必要があります。

これを補てんするのが、医療保険やがん保険などの保険です。

また国の介護保険は、サービスに対して1割のみの負担で済むというものですが、その1割の手出しが、働けなくなった場合の出費としてかなり痛手になるのと、その他の介護サービスに充てる分も含め、介護保険で補てんします。

医療保険(旧制度:一般生命保険料控除、新制度:介護医療保険料控除)

基本の保障は病気・けがで入院、手術をしたときに、かかる医療費の補てんの為に加入する保険。特約で充実した保障になります

介護保険(旧制度:一般生命保険料控除、新制度:介護医療保険料控除)

介護保険制度により介護サービスを受ける場合、個人の負担は1割負担になりますが、その1割負担の部分や、その他手出ししなければいけないサービス部分の補てんをするために加入する保険です。また、介護施設に入居するの費用の負担の軽減の為に入る、保険会社が提供する保険です。

がん保険(旧制度:一般生命保険料控除、新制度:介護医療保険料控除)

がんに罹患した場合に、給付が行われる保険です。一般的には一時金での給付をされるものか、かかった費用分が給付される実費給付タイプがあります。

控除金額と予算など考えて必要なら加入するものです。

就業保障保険(旧制度:一般生命保険料控除、新制度:介護医療保険料控除)

けがや病気などで、仕事を休まなければいけなくなった場合に、給料の補てんの為に加入する保険です。働き盛りには検討したいものです。

特定疾病保険(旧制度:一般生命保険料控除、新制度:介護医療保険料控除)

7大疾病・8大疾病とされる病気に罹患したときに、基本的に一時金で、給付を受け取るものです。がん・心疾患・脳血管疾患・糖尿病・肝疾患・腎疾患・高血圧・膵臓疾患など、要件が保険によって違うので、しっかり確認して加入してください。

個人年金保険料控除の対象となる保険

老後生活資金の積立てを目的に加入する保険です。積立の保険は、他にも種類がありますが、個人年金と分類された保険のみの控除になります。節税対策をしたいが他の控除は十分に保険加入しているという場合、老後生活資金としての積立として、あえて個人年金保険を選ばれるとよいでしょう。

積立保険はその他に、「変額保険」「終身保険」などを使った積み立てもありますが、これらは基本的に「一般生命保険料控除」になります。「個人年金保険料控除」に該当しないのでご注意下さい。

損害保険のうち生命保険料控除の対象となるもの

損害保険に含まれる一部の医療保障・所得補償・がん保障は、控除額へ算入出来るケースがあります。詳しくは、保険担当者にご確認いただくか、損保会社から送られてくる控除証明書をご確認ください。

生命保険料控除の申請方法

生命保険料控除は、年末調整を有する会社などに所属していて雇用されている方と、確定申告を行う個人で収入がある方が申告が必要で、保険会社より郵送される、「保険料控除証明書」を提出することにより、申請を行う。

年末調整の手続き

毎年10月~11月頃、契約保険会社から郵送される「保険料控除証明書」を就業先に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」と共に提出する必要があります。

確定申告の手続き

毎年10月~11月頃、契約保険会社から郵送される「保険料控除証明書」を確定申告期間の翌年2/16~3/15に、他の申請書類と同時に税務署へ提出します。

保険商品の選び方の例

生命保険料控除を満額受けるために、新しく保険に入る時のコツは、①死亡保険 ②医療保険・がん保険・介護保険 ③個人年金保険の保険料を、それぞれ年間8万円以上保険料に調整する必要があります。

控除額をできるだけ活用し、最大化するならどうするか。事例を交えてご紹介致します。

①死亡保険…6800円/月(一般生命保険料控除)→年間81,600円

②医療保険…4000円/月(介護医療保険料控除)→年間48,000円

がん保険…3000円/月(介護医療保険料控除)→年間36,000円

③個人年金…10000円/月(個人年金保険料控除)→年間120,000円

(個人年金保険は、10000円/月~の加入商品がほとんどです)

この金額を目安に加入すると、控除額を満額使って申告できます。必ずこのように加入すると良いというわけではありませんし、全ての保険を網羅したケースではないので、専門家へ相談する際の目安と考えて下さい。

このような、控除額を満額つかい、かつ、保険料をなるべく安く抑えるような保険の加入例をご紹介します。

参考:生命保険の他に控除の対象となるもの

申請すると得られる控除には以下のものがあります。

・地震保険料控除→ 火災保険に付随して付加する地震保険(損害保険)

・小規模企業共済等掛金控除 →小規模事業共済の他にも、確定拠出年金(iDeCo、企業型DC)や地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金含む積立商品 

・社会保険料控除 →今まで払っていなかった年金の追納などまで考慮すると、もっと控除額により節税になります。

節税を目的として保険加入を考える際の注意点

保険での節税を優先して加入してしまうとリスクヘッジの為にたくさんの保険に加入してしまい、保険料を払い過ぎてしまって生活費に影響する場合も考えられますので、必要以上の保障に入らないように、現在の自分に合った保険料と必要保障額を認識し、加入することを心掛けて下さい。

また、常にライフバランスは変わることを認識しておくことが重要です。収入と支出のバランスは、ライフステージや少しの変化によっても変わります。例えば、ライフプランにあまり考慮しない転職や、急な病気や環境の変化による収入減少など、人生のステージは常に変わります。

保険は定期的に内容確認をし、収入と支出のバランスが変化する時には、常に見直しを考えておく必要があります。

常に管理する方法としては、1年に一回確認する日を作ると、常に把握することができます。エンディングノートを利用した、毎年年末のご自身の振り返りなどの際に、確認タイミングを作り、毎年その時期に確認するようにすると良いでしょう。

まとめ

本記事では、保険に加入した際に使える節税方法である、生命保険料控除について説明をしました。生命保険料控除を活用することで、所得税や住民税の負担を軽減できますが、控除の上限金額が設定されているため、効果を考えながら活用する必要があります。

保険は、万一の際の経済的損失に備え、ライフイベントに向けた資金準備、リスク分散、さらには節税効果まで、ライフプランにおけるリスク管理に欠かせない存在です。

病気やケガ、死亡などのリスクに備えるだけでなく、結婚、出産、教育、老後など、人生の様々なイベントに必要な資金を計画的に準備するためにも、保険の活用は有効です。

また、投資とは異なるリスク特性を持つ保険を組み合わせることで、資産全体のリスクを分散させることができます。

ライフプランに合わせて適切な保険を選択し、生命保険料控除も賢く活用することで、リスク管理と節税を両立させ、安心で豊かな人生設計を実現していきましょう。

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投資のコンシェルジュ編集部

MONO Investment

投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

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