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四季報の使い方

会社四季報を活用して有力銘柄を探す方法を徹底解説!

難易度:

執筆者:

公開:

2024.07.29

更新:

2024.08.28

基礎知識NISA積立

目次

四季報で何がわかるのか

会社四季報とは

会社四季報に書かれている内容

「四季報を年1冊だけ買うならどの号が良い?」

「四季報予想と会社発表予想の違いは?」

「時間がないときは欄外マークで四季報予想の傾向をチェック!」

成長株(グロース株)を探すための四季報の読み方

ポイント1:「特色」「連結事業」で事業内容や企業の強みを掴んで選ぶ

ポイント2「業績記事・材料記事」で今期の業績動向や材料を確認して選ぶ

ポイント3:「業績」で業績予想データを確認し増収増益企業を選ぶ

ポイント4:「財務」データで収益力や安全性を把握する

ポイント5:株価チャートでトレンドを確認して選ぶ

四季報を使った割安株(バリュー株)の探し方

ポイント1:株価PERを見る

ポイント2:PBR・ROEを見る

ポイント3:ネットキャッシュ比率で割安株を探す

ポイント4:配当や株主優待を確認する

四季報を活用したテンバガーの見つけ方

ポイント1:時価総額1000億円以下の中小型株から探す

ポイント2:オーナー企業から探す

ポイント3:上場10年以内から探す

四季報利用の注意点

まとめ

株式投資に興味のある人なら一度は目にしたことのある「会社四季報」。会社四季報は、分厚い冊子で販売されているほか、一部データは証券会社のオンライントレードのページなどで見ることができます。

多くの投資家が利用しているものの、投資を始めたばかりという場合には、どの部分をどう使えばよいか迷うこともあるでしょう。

そこでこの記事では、四季報を使う手始めとして、四季報で実際に有力銘柄を探すには、どの指標を見てどう探せばいいのか、ポイントを紹介します。

四季報で何がわかるのか

会社四季報とは、出版社の東洋経済新報社が戦前の1936年から発行している歴史ある投資情報誌です。以下では、四季報とはどういうもので、何がわかるのかについて解説します。

会社四季報とは

会社四季報とは、日本の全上場企業約4,000社の株価や業績に関する情報を1冊にまとめたデータ本です。「四季報」という言葉の通り、毎年3、6、9、12月と年に4回発売されています。

掲載されている情報は、企業などによる公表データと四季報オリジナルデータの2種類です。

四季報掲載のデータの種類

  1. 企業が公表する情報からピックアップした主要財務・業績データなど
  2. 四季報の独自取材による業績予想や注目材料の記事など

投資を行う際には、その企業の業績や株価の実績値、これからどうなるかという将来を見定めるためのニュース・材料を確認する必要があるでしょう。四季報では、そうした投資にまつわる情報を全ての上場企業に関して1冊で確認できます。

特に、四季報の強みは、企業の今期や来期の業績がどうなるかといった2期分の業績予想について、全上場企業約4,000社分、カバーしていることです。

金融機関のアナリストの作成する予想では多くて500社ほどしか網羅できないところを、四季報では上場一社一社に担当記者が付いて取材を行い全社約4000社の予想を網羅しています。その網羅性の高さから個人投資家・機関投資家問わず多くの投資家に利用されています。

会社四季報に書かれている内容

四季報の掲載イメージ

出典:東洋経済新報社「会社四季報」を参考に弊社作成

会社四季報では、1社当たりの情報が1/2ページにコンパクトにまとめて書かれています。掲載内容は以下の12点です。

  1. 四季報オリジナルの業種分類
  2. 会社の基本情報(社名、事業内容、本社住所、仕入先・販売先など)
  3. 業績動向や材料に関するコメント記事
  4. 業績データ(売上高、営業利益などの実績および予想)
  5. 「前号からの四季報予想の変化」および「会社発表予想と四季報予想の乖離」を示すマーク
  6. 配当に関する情報(実績と予想)
  7. 株主情報
  8. 役員や子会社に関する情報
  9. 財務データ(資産、負債、CFなどの財務項目のほか、ROEなどの指標)
  10. 資本移動・株価推移・比較会社名などの情報
  11. 月足の株価チャート
  12. PER・PBRなどの株価指標

データは100名以上で構成される調査チームが企業のIR情報を収集して確認するほか、上場企業全社にアンケート調査を実施し、さらに100名を超える担当記者が取材を行った上で作成しています。情報は3ヶ月ごとに最新情報に更新されます。

多くの情報が記載されているものの、使い方については、「1冊をしっかり読み込む」「業績予想を中心に見る」「株価チャートで気になった会社だけ読む」など注目するポイントや使い方は投資家によってさまざまです。

「四季報を年1冊だけ買うならどの号が良い?」

四季報は、3月に春号、6月に夏号、9月に秋号、12月に新春号と年4回発売されているものの、「とりあえず年に1冊だけ買いたい」という方も多いでしょう。

年4号のうち最も売れていて、投資家が最も注目するといわれているのは6月発売の夏号です。

夏号が注目される理由は、4~5月に公表される3月決算企業の本決算データが収録されるからといえるでしょう。上場企業のうち2000社以上が3月期決算企業で、それらの直近の財務実績データが更新されるうえ、新しい期の予想データが掲載されるなど、情報が大幅に更新されます。

年1冊であれば夏号の利用がよいでしょう。

とはいえ、四季報では、毎号、業績予想の数値や株価に影響する最新の材料について見直しを行っています。有望株やお宝銘柄の発掘には、年1回でなく、最新号を前号との比較で見るなどして会社の変化や最新のトレンドを読み取ることが必要といえるでしょう。

「四季報予想と会社発表予想の違いは?」

現在進行中の今年度の業績予想(今期予想)については、会社自体でも予想値を発表しています。四季報にはこの会社発表予想と四季報が作成した四季報予想とが掲載されています。

会社予想は、業績が良すぎると取引先から値下げ要請を受ける、あるいは同業他社から警戒されるなどの理由で、控え目に発表されることが少なくありません。その点、四季報予想では、四季報の記者が、会社予想を踏まえつつ、外部の市況や材料を踏まえて企業に取材を行い、各企業の予想のクセなども勘案して予想を立てます。

四季報予想は必ず当たるとは限らないものの、両者が大きく乖離している場合、その後の決算発表で四季報予想に近い値に上方修正や下方修正がされるケースがよくあります。

「時間がないときは欄外マークで四季報予想の傾向をチェック!」

「四季報予想が改善されているか」「四季報予想と会社予想がどれくらい異なるか」は、各記事の欄外のマークを見るだけでも確認できます。時間のない場合はこのマークをチェックして良いものだけ確認するのもおすすめです。

欄外のマークとは、「1-2. 会社四季報に書かれている内容」で紹介した「⑤「前号からの予想の変化」および「会社発表予想と四季報予想の乖離」を示すマーク」のことです。

四季報画像の5

欄外のマークには「矢印↑」のついたマークとニコちゃんマークの2種類があります。

1.「矢印↑」マークは「前号からの四季報予想の変化」で、今号掲載の四季報独自予想の営業利益の値と前号の四季報予想の営業利益の値を比べた変化を示すマークです。マークの意味は次の通りです。特に「大幅増額↑↑」は投資家からの注目が高いため、チェックするとよいでしょう。

前号からの四季報予想の変化マークの意味

  1. 「大幅増額↑↑」は30%以上の増額
  2. 「前号並み→」は、5%未満の増額・減額
  3. 「前号比減額↓」は5%以上30%未満の減額
  4. 「大幅減額↓↓」は30%以上の減額

2.「ニコちゃんマーク」は「会社発表予想と四季報予想の乖離」を示すマークです。会社が公表している営業利益の予想値と四季報独自の営業利益の予想値との乖離度合いを表します。乖離率は「(四季報営業利益予想値-会社営業利益予想)÷会社営業利益予想の絶対値×100%」で計算します。マークの意味は次の通りです。「大幅強気」となっているものに注目して見るとよいでしょう。

会社発表予想と四季報予想の乖離マークの意味

  1. 「大幅強気」は乖離率30%以上
  2. 「会社比強気」は乖離率3%以上30%未満
  3. 「会社比弱気」は乖離率が-30%より大きく3%以下
  4. 「大幅弱気」は乖離率が-30%以下

なお、会社予想の数値に「××百万円~××百万円」などと幅がある場合は上記マークは記載されません。

出典:東洋経済新報社「会社四季報2024年2集春号」

成長株(グロース株)を探すための四季報の読み方

「四季報を使って有望株を探したい」といった場合に、よく利用される四季報の情報とその見方について紹介します。

先ずは、有望株の中でも特に成長株(グロース株)を探すときのポイントについて説明します。成長株とは、現状株価が多少高くても、業績が良好で将来的にさらなる成長や株価の上昇が見込める株のことを指します。

成長株を探すためのポイントは下記の5つです。

  1. 事業内容と企業の強みを理解する
  2. 直近の業績動向やトピックスを理解する
  3. 増収増益傾向にある企業を探す
  4. 最低限の財務健全性を確保できているかを確認する
  5. 直近の株価のトレンドを掴む

以下で詳しい内容を解説します。

ポイント1:「特色」「連結事業」で事業内容や企業の強みを掴んで選ぶ

成長株を探す際には、企業が成長する理由や根拠を理解するためにも、まずは、その企業がどういう事業を行なっているかを確認します。

四季報では、「②会社の基本情報」を確認すると企業の「特色」と「事業構成」についての記載があります。この欄で、会社がどのような事業を行い、どのような強みを持つのかを把握しましょう。

特色欄には、その会社の事業の特徴が書かれています。「国内最大手」「シェア9割」などといった業界でのシェアや「☓☓グループ」などの系列なども書かれているため、業界での地位や系列の強みもわかります。

事業構成の部分は、連結決算会社の場合は「連結事業」、単独決算企業の場合は「単独事業」という見出しになっています。

事業構成の欄には、事業部門別の売上構成比(かっこ内は各事業の売上利益率)が書かれています。売上構成比を見ることで、どの事業が最も稼ぎ頭かがわかります。記載欄の最後尾に「海外」とある場合は海外売上比率のことです。

これらの欄を見ることで、CMなどでの企業イメージからはわからない事業の実態や、業界での立ち位置が把握できます。この欄で確認した企業の主力事業について、「確かにこの事業であれば伸びそう」「海外比率が高いから円安で伸びそう」などと今後も成長が見込めると実感できれば、ピックアップしておきます。

「特色・事業構成の例:2875東洋水産」 四季報事業連結の例

出典:東洋経済新報社「会社四季報2024年2集春号」

ポイント2「業績記事・材料記事」で今期の業績動向や材料を確認して選ぶ

成長株を探す際には、直近の企業の傾向を掴むことも大切です。

四季報には、独自取材に基づく「③業績記事・材料記事」が書かれています。記事の欄では、企業の近況、足元と直近の株価に影響する事情が把握できます。

前半は「業績予想に関する記事」となっていて、営業利益を中心とした業績予想の見通しや根拠が書かれています。なお、この部分は、次項で紹介する四季報による業績予想数値の解説になっているため、業績予想の数値と合わせて確認することがおすすめです。

後半は「材料に関する記事」となっており、経営課題や戦略など中長期的な収益に影響を与える要素やその時々の株式市場で話題になっている技術やテーマが書かれています。

業績動向と材料の内容を見て、業績が上向きで良い材料があるものを選びます。

記事の見出しには「好転」「横ばい」「反落」など端的に業績動向が分かるような見出しがついているため、この見出しがポジティブなものに目を付けて確認するとよいでしょう。手早く確認ができます。

特に「最高益更新」との見出しがあるものは、純利益ベースの自己最高を記録した企業で旬の会社といえます。ただし、記事内容を踏まえて最高益の内容が、一時的な事情によるものでないことを確認するようにしましょう。また、連続して最高益を更新している場合には、株価に期待が織り込み済みとなってその後株価が上がらないケースもあるため、注意が必要です

「業績・材料記事の例:2875東洋水産」 四季報業績材料記事の例

出典:東洋経済新報社「会社四季報2024年2集春号」

ポイント3:「業績」で業績予想データを確認し増収増益企業を選ぶ

成長株を探す際には、業績が堅調に伸びている企業を選ぶことも大事です。

「④「業績数字」を活用することで、過去の業績データと今期と来期の業績予想データが時系列で確認できるようになっています。成長株を選ぶには、1期だけの業績で見ずに、時系列で見て売上と利益の双方が順調に伸びている増収増益の企業を選びます。

成長株を探す際に特に見るべきポイントは次の3つです。

  1. 売上高
  2. 営業利益
  3. 営業利益率

売上高成長率が継続して15%〜20%程度以上あれば有望といえます。四季報では売上高の伸び率の記載はないものの、20%が4年続けば約2倍になるので、4年で売上が倍になっている企業を探しましょう。

営業利益とは本業で稼いだ利益のことで、これについても継続して伸びている企業を選ぶことが大切です。成長企業では先行投資の必要もあるため10%以上など売上高よりもやや低めの伸び率でもよいといわれています。先に紹介した「業績記事」のコメントが、営業利益ベースで書かれているため、業績記事のコメントと合わせて内容を確認することがおすすめです。

また、成長株を探す際には、営業利益率も注目されています。営業利益率は、本業の利益である営業利益の売上高に対する割合です。

営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100%

営業利益率は、本業でいかに効率よく利益を出せているかを示す指標で、成長株を探すには10%を上回っているかを一つの基準として考えてみましょう。また、業種によって営業利益率の水準も変わるため、同業他社や同じ会社の過去の水準と比較することも大切です。

営業利益率は注目指標であるものの、四季報にはそのまま掲載されていないため、別途計算が必要です。

「四季報の業績欄の記載例:2875東洋水産」 四季報事業連結の例

出典:東洋経済新報社「会社四季報2024年2集春号」

※「連」は連結決算、「予」は業績予想、「会」は会社による自社予想

ポイント4:「財務」データで収益力や安全性を把握する

成長株を選ぶときは、倒産リスクを避けるために、この財務データで企業の健全性も合わせて確認して選ぶことが必要です。

「⑨財務データ」を確認すると総資産や自己資本、資本金などの財務状況を示すデータが多く記載されています。

健全性を確認する際に注目されるポイントは下記の2つです。

  1. 自己資本利益率が高いか?
  2. 営業キャッシュフローがプラスか?

自己資本比率とは、総資本のうち自己資本がどれくらいの割合あるかを示す指標です。自己資本とは返済不要な資金のことです。

自己資本比率= 自己資本 ÷ 総資本(他人資本+自己資本)× 100%

自己資本比率が高いほど、経営が安定し、倒産しにくい会社と見なされます。50%以上が優良企業、70%以上が超優良企業といわれています(ただし、金融・不動産は例外です)。業種などにも左右されますが、自己資本比率が50%以上だと安全な企業と判断できることが多いです。

健全性を確認する際には、営業キャッシュフローがマイナスになっていないことも確認しましょう。営業キャッシュフローとは本業を行った結果、手元に残った現金のことです。営業キャッシュフローがマイナスの場合は、本業で稼げていないことを示すため、プラスになっている銘柄を選ぶことが大切です。

ポイント5:株価チャートでトレンドを確認して選ぶ

「⑪月足の株価チャート」を確認すると、1社ごとに月足の株価チャートや移動平均線、出来高が3年分ほど掲載されています。

細かなチャート分析を行うことは難しいものの、例えば下記のような点などで成長が見込めることを確認しましょう。

・移動平均線が上昇トレンドを描いている ・直近1年くらいの株価が移動平均線の上で推移しているか

移動平均線は、株価のトレンドを示すため、移動平均線が右肩上がりだと株価は上昇傾向にあると考えられます。

また、移動平均線は株の売買のコストの平均を示しているともいえるので、株価がその移動平均線より上にあると、含み益を抱えた投資家が追加で買い増す可能性が高く相場が強気になりやすいといわれています。そのため、最近の株価が移動平均線の上で推移している方が、株価は上昇しやすいといえるでしょう。

実際の買い時は日足、週足などの詳しい株価データで判断し、四季報では銘柄選びの参考とするのがよいでしょう。

四季報を使った割安株(バリュー株)の探し方

割安株とはバリュー株ともいい、企業価値や業績の割に安い価格で取引されている株のことをいいます。適切に本来の企業価値が評価されれば株価が上がるとされるものです。

割安株は、株価が再評価されるきっかけがないと割安のまま推移することが多く、成長株のような大きな利益は期待できないものの、価格変動が小さく運用コストが低いといえます。そのため、長期保有で安定した配当や株主優待を受け取りたい人に好まれる傾向です。

以下では、四季報を使った割安株の探し方について紹介します。ポイントは下記の4つです。

  1. PERで収益に対する割安株を探す
  2. PBRで企業の資産価値に対する割安株を探す
  3. ネットキャッシュ倍率で割安株を探す
  4. 配当や株主優待を確認する

以下で詳しい内容を解説します。

ポイント1:株価PERを見る

株価が割安かどうかを判断する際によく利用されるのはPER(株価収益率)です。

PERとは株価収益率といい、株価が1株当たりの純利益の何倍で買われているかを示す指標です。

PER(株価収益率) = 株価 ÷ EPS(1株純利益)

企業の稼いだ利益に対する株価の割安度を測る指標で、倍率が高いほど割高、低いほど割安と判断されます。

四季報では株価チャートの横に「株価指標」という欄が設けられており、下記のように、予想PER、実績PERといった数値が掲載されているので確認しましょう。

「四季報の株価指標の掲載例」 四季報株価指標の例

出典:東洋経済新報社「会社四季報2024年2集春号」をもとに弊社作成

PERについては、何倍が妥当といった明確な水準はないものの、日経平均株価のPERが15倍ほどで推移しているため、15倍を下回ると割安、上回ると割高という見方が一般的です。

ただし、実際には業種ごとでも水準が異なるため、業界平均や、同業他社などと比べて判断する必要があるといえるでしょう。業界平均のPERは、四季報の巻頭の「「業種別」業績展望」で確認できます。

なお、PERの数値の低い場合でも、数値だけで買いと判断せずに、なぜ割安なのか、何か問題はないかなど中身を確認して選ぶことが重要です。

PERは割安を測る指標である一方で、投資家の期待度を表す指標でもあるため、PERの低いものは投資家の期待度も低く、その後も株価は低いまま推移することも少なくありません。

PERが低く割安だからすぐに買うということでなく、PERの低い銘柄はなんらかの事情で投資家の期待度が低くなっていることを踏まえて、銘柄の業績や事業内容、背景などをよく吟味して選ぶことがおすすめです。

ポイント2:PBR・ROEを見る

割安株を探す際には、PBRという指標もよく利用されます。PBRは、四季報上では、先述のPERと同様に「株価指標」欄で確認できます。

PBRとは株価純資産倍率といい、1株当たり純資産の何倍の値段で株が買われているかを見る指標です。

PBR(株価純資産倍率) = 株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS)

PBRは1倍以上であれば割高、1倍以下であれば割安と判断されます。

PBRの計算式の分母の「1株当たり純資産(BPS)」は、会社が解散した場合に株主に配分される資産で「解散価値」でもあり、PBRが1倍の場合は、株価と解散価値は同等といえます。一方、PBRが1以下だと、株価は1株純資産(解散価値)より低くなるため、割安と見なされます。

特にPBRが1倍割れしている低PBRの銘柄は、2023年3月に東証がPBR1倍以下の上場企業に対して改善要請をして以来、企業価値や株価が高まると期待されて注目されています。

このPBRが低い企業を選ぶ際には、ROEで収益性も合わせて収益性の高い企業に絞り込んで確認することが大切です。

ROEとは自己資本利益率といい、下記の計算式の通り、自己資本でどのくらいの利益を上げたかを示す指標です。

ROE = 純利益 ÷ 自己資本

ROEが高いほど資本をうまく使い効率よく稼ぐ会社といえます。一方、ROEが低いほど経営効率の悪い会社と見なされます。ROEは、一般的には10%を上回ることが望ましいとされているため、10%以上を目安にするとよいでしょう。

ポイント3:ネットキャッシュ比率で割安株を探す

企業が保有する資産に対する割安感を見る指標としては、ネットキャッシュ比率も利用されます。

ネットキャッシュ比率とは、時価総額に対するネットキャッシュ(現金など)の割合です。ネットキャッシュ比率が100%以上であれば、その企業を買収すると購入資金(=時価総額)以上の資金が手に入ることを意味します。

ネットキャッシュ比率 = (現金同等物-有利子負債) ÷ 時価総額 × 100%

ネットキャッシュ比率が高いほど、時価総額に対してキャッシュリッチで、割安株と見なされます。

四季報の⑨「財務」ブロックに、時価総額、現金同等物、有利子負債の金額が記載されているため、これらを使ってネットキャッシュ比率を簡易的に計算し、確認してみましょう。

ポイント4:配当や株主優待を確認する

割安株を長期保有し配当や株主優待を得ることを考えている人は、予想配当や株主優待を確認しましょう。

配当については、四季報の⑥「配当」ブロックで、過去の配当実績と、来期の予想配当利回りを確認できます。予想配当利回りは、3%以上のものを目安に選ぶとよいでしょう。

株主優待については、四季報の「巻末5:株主優待」で確認可能です。優待を実施する企業の一覧で、優待を受けるのに必要な株数や優待内容について把握できます。

四季報を活用したテンバガーの見つけ方

テンバガーとは、株価が10倍以上になるような銘柄のことです。成長株の中でもテンバガーとなる銘柄を選びたいと考える人は多いでしょう。

過去に株価が10倍になった銘柄には、下記のような特徴があるといわれています。

  • 過去の売上高成長率が高い
  • 時価総額が小さい
  • オーナー系企業である
  • 上場年数が短い

出典:岡三証券「日本株スポット資料 未来のテンバガーを探す

これらの特徴を踏まえ、「四季報を使ってテンバガーを探す」際には、「2.成長株を探すための四季報の読み方」で見た点に加えて、下記3点を押さえて選ぶとよいでしょう。

  1. 時価総額1000億円以下のものから選ぶ
  2. オーナー企業から選ぶ
  3. 上場5年以内のものから選ぶ

上記3点の詳しい内容は次の通りです。

ポイント1:時価総額1000億円以下の中小型株から探す

テンバガーを探すためには、時価総額1000億円以下の中小型株を選ぶようにしましょう。

時価総額が小さいと、その分、大きな伸びしろが期待できます。反対に時価総額が大きい大型株では、10倍もの成長を遂げることは難しいといえるでしょう。

実際に、2008年~2020年までに10倍以上の株価になった銘柄について、最安値を付けた時の時価総額を見ると、1000億円以下だったものが全体の98%といわれています。

(出典:日経BP「日経マネー 2020年9月号 仕込むなら今! 次世代10倍株」、日本経済新聞社「調査が示す10倍株の特色 7割は時価総額50億円未満日の丸テンバガー大研究(下)」)

時価総額は、四季報の⑨「財務」ブロックで確認できます。

ポイント2:オーナー企業から探す

テンバガーを探すには、代表取締役が筆頭株主であるようなオーナー企業を選ぶようにしましょう。オーナー企業とは、創業者やその親族が過半数以上の株式を所有している企業のことです。

社長が筆頭株主などであると、会社の成長意欲が高く、株価が上がりやすいといわれています。実際に、テンバガーの約7割はオーナー企業だというデータもあります。

(出典:岡三証券「日本株スポット資料 未来のテンバガーを探す」)

四季報の⑦「役員」ブロックで社長名が、⑧「株主」ブロックでは株主名と株主の順位がわかります。オーナー企業を選ぶには、社長や創業者が筆頭株主あるいは大株主の上位3位に入っているかどうかなどを確認して選びましょう。

ポイント3:上場10年以内から探す

テンバガー候補を探すには、上場から10年以内の新興株を選ぶのがよいといわれています。

テンバガーは、上場10年以上の一定の成長を遂げた企業よりも、上場年数の浅い新興株に多く見られます。例えば、2012年末~22年末の10年間で株価が10倍以上になった銘柄82社の上場経過年数の中央値は6.8倍でした。

(出典:岡三証券「日本株スポット資料 未来のテンバガーを探す」)

このため、上場から年数の浅い企業に注目するのがよいでしょう。企業の上場日は、四季報の②「会社基本情報」のブロックで確認できます。

四季報利用の注意点

四季報の予想が良くて買ったのに株価が下がって損をした、四季報を読んだのに儲からないということもよくあります。そうしたことを回避するためにも下記点に意識して四季報を使うことがおすすめです。

  • 四季報予想は外れることもある
  • 四季報予想が当たっても株価は下がることがある
  • 四季報の情報が織り込み済みかどうかは四季報では分からない

四季報予想はあくまで予想値のため、外れることもあります。そのため、実際に投資を行う際には四季報以外の最新の市況や業界のトレンドなどの情報ともよく照らし合わせて判断する必要があります。

また、四季報予想が当たっていても、株価が下がることは少なくありません。例えば、四季報が会社発表予想より強気の予想を立てていて、後に会社が業績を上方修正しても、投資家が期待した値よりも修正幅が小さいと、期待外れということで株価が急落することがあります。

四季報で公表された情報が株価に織り込み済みかどうかを判断する術は四季報上にはありません。各銘柄を安く買って高く売るという的確な判断をするためには、継続してその銘柄の株価や業績の動向を監視しておくなどの対応が別途必要です。

まとめ

四季報の情報を使って有力銘柄を探すポイントについてお伝えしました。四季報で有力銘柄を選ぶには、その企業の主力事業を知る、売上高の伸び率の高いものを押さえるなど様々な方法があります。

四季報を使いこなして株式投資を行うには、個別株の研究はもちろん、株価に影響するマクロ要因などについても詳しくなる必要があるといえるでしょう。個別株の運用のための勉強にそれほど時間がかけられないといった場合には、プロに運用を任せる投資信託などを購入するのも選択肢でしょう。

資産運用に悩む場合には、専門家であるファイナンシャル・アドバイザーに相談するなどして、自分のライフスタイルや志向にあった投資方法を選択することがおすすめです。

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前川心

フリーライター

大阪大学経済学部を卒業後、ビジネス系出版社で主に株式投資・企業情報・景気動向に関する情報誌のリサーチ・編集業務を担当。独立後は投資・不動産・転職分野を得意とするWEBライター、インタビューライターとして活動。金融投資メディアやビジネス系メディア、不動産メディアで解説記事を多数執筆。

大阪大学経済学部を卒業後、ビジネス系出版社で主に株式投資・企業情報・景気動向に関する情報誌のリサーチ・編集業務を担当。独立後は投資・不動産・転職分野を得意とするWEBライター、インタビューライターとして活動。金融投資メディアやビジネス系メディア、不動産メディアで解説記事を多数執筆。

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会社四季報とは、日本の全上場企業約4,000社の株価や業績に関する情報を1冊にまとめたデータ本で、東洋経済新報社発刊です。「四季報」という言葉の通り、毎年3、6、9、12月と年に4回発売されています。国内の全上場企業の情報が1冊でコンパクトにまとまっている出版物は海外ではあまり見られず、日本特有のものとして評価されています。

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