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劣後債とはどんな債券?メリット・デメリットをわかりやすく解説

劣後債とはどんな債券?メリット・デメリットをわかりやすく解説!

難易度:

執筆者:

公開:

2024.07.20

更新:

2024.08.09

基礎知識債券投資インカムゲイン

目次

劣後債(Subordinated Bonds)とは?特徴と仕組みを解説

劣後債の特徴

期限付劣後債と永久劣後債の特徴と違い

期限付き劣後債とは?

期限付劣後債のメリット・デメリット

永久劣後債とは?

永久劣後債のメリット

永久劣後債のデメリット

まとめ

劣後債(Subordinated Bonds)は、企業が資金調達の手段として発行する特殊な種類の社債です。

普通社債(シニア債)と比べて、企業が債務不履行(デフォルト)した際に返済の優先度が「劣後」することから、このような名前になっています。デフォルト時に弁済されないリスクが発生するため、その分シニア債よりも利率(リターン)が大きく設定されているのが特徴です。債券の中では高い利回りになるため、普通社債よりも高い利回りが欲しい、という人におすすめです。

本記事では、劣後債の特徴やメリット・デメリット、具体的な事例を説明します。

ぜひ、劣後債の特徴を理解した上で、資産運用の選択に役立ててください。

劣後債(Subordinated Bonds)とは?特徴と仕組みを解説

債券を中心としたリスクとリターンの関係イメージ

劣後債は債券と株式の中間的特性を備えた証券です。額面に対して一定の利金が支払われるというシニア債(普通社債)と同じ特性を持つ一方、発行体が資本不足に陥った際には、シニア債に先んじて損失を吸収する役割を果たします(シニア債よりも支払い順位が劣後する)。このような特徴を持つ金融商品を資本性有価証券(ハイブリッド証券)と呼び、劣後債は、ハイブリッド証券の1種です。

ハイブリッド証券は、発行体にとっては株式のような資本性があるため、一定の資本性が認められますが、株式ではないため発行しても株式の希薄化が回避できます。

劣後債の特徴

企業が発行する主な証券のイメージ

劣後債には、以下6つの特徴があります。

  • 支払い(弁済)順位がシニア債より低い
  • 償還期限(満期)が長い
  • 繰上償還条項が付記されている
  • 価格変動リスクがシニア債より高い
  • 利回り水準がシニア債より高い
  • 会計上の分類が特殊

それぞれの特徴について詳しく説明します。

支払い(弁済)順位がシニア債より低い

劣後債は、企業が倒産または財務困難に陥った場合、他の債務(特にシニア債)よりも返済優先度が低いです。そのため、発行体企業が支払い困難な状況に陥ると、他の債権者の支払いが全て終わった後に、お金に余裕がある時のみ支払いがなされます。

償還期限(満期)が長い

劣後債の償還期限は通常長く、無期限のものもあります。長い償還期限は、市場の利率が変動する中で投資が固定されてしまうリスクを高めます。そのため、他の有望な投資機会が現れた場合でも、資本が既に劣後債に拘束されている可能性があります。

繰上償還条項が付記されている

繰上償還条項(コール条項)が一般的に付されています。この条項により、企業は特定の条件下で劣後債を早期に償還することができます。早期償還されると、高い利回りの投資が終わってしまう可能性があります。これは、再投資を低い利回りで行う「再投資リスク」を引き起こす可能性があります。

価格変動リスクがシニア債より高い

普通社債に比べて価格変動が大きい傾向にあります。大きな価格変動は、投資家が劣後債を売却する際に不利な価格で売らざるを得ない可能性があることを意味します。

利回り水準がシニア債より高い

劣後債の利回りイメージ

普通社債に比べて利回りが高い傾向にあります。高い利回りは魅力的に見えますが、それは高いリスクを取ることの対価でもあります。そのリスクが受け入れられるかどうかは、投資家自身で慎重に評価する必要があります。

会計上の分類が特殊

劣後債は一定の条件下で自己資本に算入可能です。一定の条件を満たす場合、劣後債は企業のバランスシート上で自己資本として扱われることがあります。これが意味するのは、企業が財務上で不安定になると、劣後債は資本削減の対象になる可能性があり、それによって投資家に更なるリスクが生じる可能性があるということです。

期限付劣後債と永久劣後債の特徴と違い

主要な証券の弁済順位

劣後債にも種類があります。それが期限付き劣後債と永久劣後債です。名前の通り、期限付き劣後債は満期が設定されている劣後債、永久劣後債は満期が設定されていない劣後債です。

それぞれの特徴と、メリット・デメリットについて説明します。

期限付き劣後債とは?

期限付劣後債は、満期が設定されている劣後債です。そのため、シニア債と同様に満期が来たら償還されます。ものにもよりますが、期限付劣後債は比較的短期間で元本が返還される傾向にあります。一般に、満期が設定されていない永久劣後債と比較して、期限付き劣後債の方が利回りは低いものの、弁済順位が高く、値動きも小さいという特徴があります。

期限付劣後債のメリット・デメリット

期限付き劣後債のメリットは、シニア債(普通社債)と比べて利回りが高く設定されていることです。発行体が破綻しなければ、償還期限(満期)になると元本も払い戻されます。永久劣後債と比べて支払い順位も高いため、リスクも少ないです。

一方で、シニア債と比べると弁済順位が低く、永久劣後債と比べると利回りが低いというのがデメリットです。

永久劣後債とは?

永久劣後債とは、弁済順位がシニア債や期限付劣後債よりも低く、満期日が設定されていない債券です。弁済順位が低いため、比較的高い利回りが設定されることが多く、また、企業が破綻しない限り、利息の支払いが永久に続く仕組みとなっています。しかし、多くの永久劣後債には繰上償還条項(コール条項)が設定されており、実際にはその条項に基づいて償還されるケースが多いため、本当に永久に効果を発揮しているものは多くありません。

永久劣後債のメリット

永久劣後債はシニア債や期限付き劣後債よりも利回りが高く設定されています。

また、永久劣後債はシニア債や期限付き劣後債と異なり、変動金利の場合があります。変動金利の永久劣後債では、発行体があらかじめ定められた期日までに繰上償還(コール)しなかった時、以降の支払い金利(利率)が上昇するような仕組みが一般的です。

永久劣後債のデメリット

永久劣後債のデメリットは大きく2つあります。1つはデフォルト時の回収率が低いこと、もう1つが繰り上げ償還が見送られると債券価格が下落するリスクがあることです。

デフォルト時の回収率が比較的低い

永久劣後債は、万が一デフォルトした場合に回収できる元本の割合が一般的に低いことがデメリットです。発行体が破産手続きを開始したなどの劣後事由の発生時、普通社債や期限付劣後債よりも弁済順位が低いため、元本や利払いが正常に行われない可能性が比較的高いといえます。

発行体が繰上償還を見送ると債券価格が下落する価格変動リスクがある

永久劣後債では、初回の繰上償還可能日に発行体による早期償還(ファーストコール)が行われることが市場慣行となっており、一般的です。

そのため、市場慣行から外れてファーストコールが行われなかった(コールスキップされた)場合、発行体の財務状況の悪化などが懸念されます。

この結果、債券市場において、発行体の信用力が低下したと判断され、価格が下落する可能性が高いです。

まとめ

劣後債は、シニア債と比べて弁済順位が低いことから発行体のデフォルト時弁済されない可能性が高い一方で、その分高い利回りが期待できる債券です。

劣後債にも期限付き劣後債と永久劣後債という種類があり、それぞれのメリット・デメリットについて解説しました。

資産ポートフォリオを作る中で債券投資は定期的なインカムゲインを獲得できる有望な金融商品の一つで、その中でも利回りが高い劣後債への投資を検討される方は多いでしょう。

劣後債への投資を検討する際は、劣後債の特性を十分に理解し、自身のリスク許容度と投資目的に合致するかを慎重に見極めることが重要です。また、デフォルトリスクや価格変動リスクなどのデメリットも考慮に入れると同時に、格付け機関の格付けや、レポート、その他発行体に関する情報を精査して、投資判断にご活用ください。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

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劣後債

発行企業の倒産時には、一般の債権と比較して弁済順位が劣る債券。 普通社債の元利金などが全額支払われた後でなければ元利金が支払われず、社債でありながら相対的にリスクは高い。 その分、利回りは相対的に高めに設定されており、また、金融機関が発行する劣後債については、制限付きで自己資本への算入が認められているため、金融機関が自己資本比率を高める手段として発行するケースが目立つ。

ハイブリッド証券

株式と債券の特徴を合わせ持つ証券のこと。劣後債、優先出資証券、優先株などで、自己資本の維持・増強を求められている金融機関や企業が発行。発行体にとって、株式の希薄化を回避できるほか、信用格付けに影響を与えないなどのメリットがある。

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