
含み損とは?実現損との違い・税金対策から対処法まで徹底解説
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執筆者:
公開:
2025.03.03
更新:
2025.03.04
目次
投資をしていると、保有資産が値下がりして「含み損」が出ることはよくあります。含み損とは実際に売却しない限り損失が確定しない「見えない損失」であり、多くの投資家がこの扱いに迷い、ストレスを感じることも少なくありません。しかし、含み損の正しい知識や対処法を知っておけば、むやみに慌てる必要はありません。この記事では、含み損の意味や実現損との違い、税金への影響、そして上手に付き合うための具体的な対応策を分かりやすく解説します。
含み損とは?
投資において「含み損(ふくみぞん)」とは、保有している金融資産(株式、投資信託、債券など)の市場価格が購入時の価格よりも下がり、評価額がマイナスになっている状態を指します。ただし、実際に売却していないため、あくまで「含み(未確定)」の損失となります。
例えば、あなたが1株1,000円で購入した株が、現在の市場価格で800円になったとします。この場合、1株あたり200円の含み損が発生していることになります。
また、含み損は投資をしていれば誰でも経験するものであり、短期間での値動きに一喜一憂しすぎないことが大切です。
含み損と実現損の違い
含み損は、資産をまだ売却していないため、あくまで帳簿上の評価損です。一方、実際に売却し損失が確定すると、これを実現損と呼びます。
例えば、先ほどの株式を800円で売却した場合、200円の損失が確定し、含み損から実現損へと変わります。
多くの投資家は、含み損を抱えると「売るべきか、持ち続けるべきか」で悩みます。ここで冷静に判断することが重要です。
種類 | 意味 | 具体例 |
---|---|---|
含み損 | 未確定の損失(売却していない) | 1,000円で買った株が800円に下がるが、まだ売っていない |
実現損 | 確定した損失(売却した) | 800円で売った時点で、200円の損失が確定 |
時価があるかどうかで含み損は変わる
含み損の考え方は、資産に時価(市場価格)があるかどうかによって変わります。
時価あり(株式、投資信託など) | 時価なし(非上場株式、不動産など) | |
---|---|---|
含み損の特徴 | 日々変動するため、すぐに把握できる | 売却しないと正確な評価が分からない |
損失確定の方法 | 売却すると実現損になる | 売却時の評価額で損益が確定 |
含み損があると税金はどうなる?
日本の税制では、投資の課税対象は「実現利益(確定利益)」に限られます。そのため、含み損の状態では税金は発生しません。
例えば、1株1,000円で購入した株が800円に値下がりし、含み損が出ている場合でも、売却しない限り損失は確定しないため、税金の影響はありません。
含み損のまま売却するとどうなる?
含み損が発生している資産を売却すると、損失が確定し「実現損」になります。この場合、利益が発生していないため、税金はかかりません。
さらに、この確定した損失(実現損)は、他の投資利益と損益通算が可能となり、税負担を軽減できる可能性があります。
損益通算とは?(確定損益に適用される)
損益通算とは、投資で確定した利益と損失を相殺し、最終的な課税額を減らすことができる仕組みです。
損益通算の具体例
損益通算をしない場合
株式の確定利益:+50万円
含み損(未売却):-20万円
→ 含み損は確定していないため、50万円に対して課税(税額:約10万円)
損益通算を活用した場合
株式の確定利益:+50万円
含み損の株を売却(損失確定):-20万円
→ 課税対象は30万円に減少(税額:約6万円)
このように、含み損を確定(実現損)させることで、税金を抑えることができます。ただし、損益通算を考える際は、「他の確定利益があるかどうか」を確認しましょう。
含み損は翌年に繰り越せる?
含み損は繰り越せません。ただし、損失を確定させた場合(実現損)には、最長3年間の繰越控除が可能です。
この制度を活用すれば、将来の利益に対する税負担を抑えることができます。ただし、繰越控除を利用するには確定申告が必要なので、申請を忘れないようにしましょう。
含み損が出た場合の対応策
投資をしていると、含み損が発生することは珍しくありません。以下のような対応策を検討しましょう。
長期保有を検討する
投資対象が長期的に成長する見込みがあるなら、短期的な価格変動を気にせず、長期保有するのも選択肢の一つです。
ナンピン買い(追加購入)
価格が下がったタイミングで追加購入することで、平均購入価格を下げる手法です。ただし、投資対象の将来性を慎重に見極める必要があります。
損切り(売却)
投資方針やリスク管理の観点から、一定の損失が出た時点で売却する(損切り)ことも有効な戦略です。大きな損失を防ぐために、あらかじめ損切りのルールを決めておくとよいでしょう。
損益通算で節税
年間の投資利益がある場合、含み損を実現損に変えることで、損益通算(利益と損失を相殺)し、税負担を軽減することができます。例えば、50万円の投資利益があり、20万円の含み損がある場合、20万円分を売却し損失確定させれば、課税対象となる利益を30万円に減らすことができます。
まとめ
含み損とは、購入時の価格よりも現在の市場価格が下がったことで発生する未確定の損失です。含み損の状態では税金は発生せず、実際に売却して損失が確定すると実現損になります。また、時価がある資産(株式や投資信託など)とない資産(非上場株式や不動産など)では含み損の影響が異なります。対応策としては、長期保有、ナンピン買い、損切り、損益通算などが考えられます。投資では含み損は避けられませんが、冷静に対応し、自分の投資スタイルに合った戦略を選ぶことが重要です。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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関連質問
関連する専門用語
含み損益
含み益と含み損のこと。 含み益とは、保有する有価証券が買った時よりも値上がりし、売却すれば利益が出る状態。 含み損とは、保有する有価証券が買った時よりも値下がりし、売却すれば損益が出る状態。
実現損益
運用した結果、実際に得られた収益(被った損失)のこと。
損益通算
投資で発生した利益と損失を相殺することで、課税対象となる利益を減らす仕組みのことです。たとえば、株式投資で50万円の利益が出た一方、別の取引で30万円の損失が発生した場合、損益通算を行うことで、課税対象となる利益は50万円から30万円を引いた20万円になります。この仕組みにより、納める税金を減らすことが可能です。 損益通算が適用されるのは、同じ「所得区分」の中でのみです。たとえば、株式や投資信託の譲渡損益や配当金などは「株式等の譲渡所得等」に分類され、この範囲内で損益通算が可能です。ただし、不動産所得や給与所得など、異なる所得区分間では基本的に通算できません。 さらに、株式投資の損失は、損益通算後も控除しきれない場合、翌年以降最長3年間繰り越して他の利益と相殺できます。これを「繰越控除」と呼び、投資初心者にとっても節税に役立つ重要なポイントです。
債券
債券(サイケン、英語表記:Bond)とは、発行者が投資家に対して将来一定の金額を支払うことを約束する金融商品です。 国や地方自治体、企業などが資金を調達する目的で発行し、投資家はこれを購入することで、定期的に利息(クーポン)を受け取ります。満期が来ると、投資した本金が返済されます。 債券はリスクが比較的低く、安定した収入を求める投資家に選ばれることが多いです。 また、市場で自由に売買が可能であるため、流動性も確保されています。債券市場は世界的にも広がりを見せており、多様な投資戦略に利用されています。
投資信託
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。運用によって得られた成果は、各投資家の投資額に応じて分配される仕組みとなっています。 この商品の特徴は、少額から始められることと分散投資の効果が得やすい点にあります。ただし、運用管理に必要な信託報酬や購入時手数料などのコストが発生することにも注意が必要です。また、投資信託ごとに運用方針やリスクの水準が異なり、運用の専門家がその方針に基づいて投資先を選定し、資金を運用していきます。
分散投資
リスク低減のため、資金を複数の銘柄や資産クラス、地域、業種に分配して投資する方法。特定の投資対象が値下がりしても、他の資産の上昇で損失を緩和できる可能性があります。安定したリターンを長期的に目指す基本戦略です。
アセットクラス
アセットクラスとは似たような特徴を持つ資産のグループのこと。アセットクラスは大きく分けて株式や債券などの伝統的アセットクラスと、ヘッジファンドや不動産などの代替アセットクラスの2つに分けられる。
ポートフォリオ
ポートフォリオとは、資産運用における投資対象の組み合わせを指します。分散投資を目的として、株式、債券、不動産、オルタナティブ資産などの異なる資産クラスを適切な比率で構成します。投資家のリスク許容度や目標に応じてポートフォリオを設計し、リスクとリターンのバランスを最適化します。また、運用期間中に市場状況が変化した場合には、リバランスを通じて当初の配分比率を維持します。ポートフォリオ管理は、リスク管理の重要な手法です。
損切り
損切りとは、投資で含み損(評価損)が発生した際に、損失を確定させるために資産を売却する行為を指します。これにより、さらなる損失拡大を防ぐことを目的としています。 価格の回復を期待して保有を続ける選択肢もありますが、市場環境や企業の業績によっては損失が拡大する可能性もあります。そのため、事前に「購入価格から10%下落したら売却する」といったルールを設定し、機械的に実行することで、感情に左右されることなくリスク管理を行う手法として活用されています。
非上場株式
非上場株式とは、証券取引所に上場していない企業の株式を指す。上場株式とは異なり、公の市場で自由に売買できず、流動性が低いのが特徴である。主にベンチャー企業や中小企業が発行し、売却や譲渡には会社の承認が必要な場合が多い。投資家にとっては、高い成長が期待できる一方で、換金の難しさや情報の透明性の低さといったリスクが伴う。
評価額
評価額とは、資産や企業の価値を金銭的に算定した金額のことである。市場価格が存在する場合はその価格を用いるが、不動産や非上場株式などの場合は、鑑定評価や財務分析を基に算出される。税務や会計、投資判断の場面で重要な指標となり、資産売却や企業のM&Aの際にも適正な価格を判断するために用いられる。評価額は算出方法によって異なることがあり、状況に応じた適切な評価が求められる。
市場価格
市場価格とは、金融商品や商品が市場で取引される際の実際の価格を指す。株式や債券、商品などの資産は、需要と供給のバランスによって日々価格が変動する。市場価格は、投資判断や企業の財務評価において重要な指標となる。特に金融市場では、リアルタイムで価格が更新され、経済情勢や投資家の心理によって変動するため、資産価値を把握する際の基準として活用される。
リスク管理
リスク管理とは、資産運用において損失のリスクを抑えながら安定したリターンを得るための戦略や手法を指します。市場の変動や経済環境の変化により、投資資産の価値は常に変動するため、適切なリスク管理を行うことが重要です。具体的には、異なる資産クラスに分散投資することでリスクを分散させる、投資対象の信用力や市場環境を定期的に見直す、ストップロス(損切り)ルールを設定するなどの方法があります。また、長期的な視点でリスク許容度を考慮しながらポートフォリオを調整することも有効です。適切なリスク管理を行うことで、市場の急変動時にも冷静に対応し、資産の保全と成長のバランスを取ることが可能になります。
税制優遇措置
税制優遇措置とは、政府が特定の経済活動や投資を促進するために、税負担を軽減する制度のことを指す。具体的には、法人税の減税、所得控除、減価償却の特例などが含まれる。例えば、中小企業やスタートアップに対する税制優遇、特定の産業への投資促進策などがある。これにより、企業や個人は資金負担を抑えつつ、事業成長や投資の拡大を図ることができる。政策目的に応じて適用範囲や内容が変わるため、適用条件の確認が重要である。
ナンピン
保有している銘柄の価格が下落した際に買い増すことにより平均購入単価を下げる投資方法を「ナンピン買い」という。例えば、10,000円で100株購入した株式が6,000円に下落した際に100株買い増すことにより平均購入単価を10,000円から6,000円に引き下げることができるが、さらに下落した際は損失がさらに大きくなるので注意が必要である。 反対に空売りの際、値上がりしてしまった場合に売り増すことを「ナンピン売り」という。