個人年金保険はおすすめしない?仕組みや税金・控除について解説
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公開:
2024.11.05
更新:
2024.11.05
目次
個人年金保険が「おすすめしない」「やめとけ」といわれる理由とは?
個人年金保険全般に共通して「おすすめしない」「やめとけ」と言われる3つの理由
1.予定利率が低く自分で投資をしたほうが資産を増やせる可能性があるから
個人年金保険は、貯蓄性のある生命保険の一種です。保険料を支払いながら将来受け取る年金を積み立て、契約時に定めた年齢から年金を受け取る商品設計となっています。
また、個人年金保険は、公的年金の上乗せとなる私的年金という面もあります。公的年金給付だけでは十分に老後資金を賄えない場合の上乗せの年金として積み立てることができます。
掛金が所得から控除されるため、節税効果も期待できます。
一方で、「iDeCoよりも節税メリットが薄く、利回りが低い」ということから「個人年金はおすすめしない」というネガティブな声があるのも事実です。
今回は、個人年金保険の特徴やメリットなどを解説します。老後資金を用意するための手段を模索している方に役立つ内容となっているので、ぜひ参考にしてみてください。
個人年金保険とは?仕組みと種類を説明
個人年金保険とは、契約時に定めた年齢まで保険料を払い込み、その後一定期間または一生涯にわたって年金を受け取る貯蓄型の保険です。契約する際には、生命保険会社の窓口またはインターネット、保険代理店の窓口で手続きを進めるのが一般的です。
個人年金保険にはさまざまな種類があり、受取期間による分類と運用方法による分類があります。
受取期間による分類
個人年金保険は、基本的に60歳以降で契約時に決めた年齢から受け取りを開始します。年金の受け取り方法は保険会社によって異なりますが、主に以下の種類が用意されているのが一般的です。
年金の種類 | 特徴 |
---|---|
確定年金 | 加入者の生死にかかわらず、契約時に決めた期間は本人または遺族が年金を受け取れる |
有期年金 | 加入者が生存していることを条件に、契約時に決めた期間は本人が年金を受け取れる |
夫婦年金 | 夫妻のいずれかが生存している限り、年金を受け取れる |
終身年金 | 加入者が亡くなるまで年金を受け取れる |
保証期間付終身年金 | 保証期間中は加入者の生死にかかわらず年金給付が保証され、保証期間終了後は生存していることを条件に加入者が亡くなるまで年金を受け取れる |
確定年金や有期年金は受け取れる期間が決まっているため、「公的年金を受け取るまでの期間だけ年金を受け取りたい」のように、ピンポイントで収入の空白期間を埋めたいときに有用です。
夫婦年金と終身年金(保証期間付終身年金含む)は終身に渡って支給されるため、長生きリスクに備えたいときに向いています。ただし、確定年金や有期年金と比較して保険料が高くなりやすく、早期に亡くなってしまうと受け取った年金額が支払った保険料を下回るリスクがある点に留意しましょう。
なお、初回の年金受取開始日までに被保険者が亡くなった場合は、家族が死亡給付金を受け取れます。
運用方法による分類
個人年金保険は、商品によって以下のように運用方法が異なります。
年金の種類 | 特徴 |
---|---|
定額個人年金保険 | 契約時に決めた金額が支払われ、将来の利回りが確定している |
変額個人年金保険 | 保険会社が用意している運用商品を選択した、将来受け取れる年金額が運用パフォーマンスに応じて変動する |
外貨建て個人年金保険 | 保険料を外貨で運用するため、将来受け取れる年金額が変動する |
定額個人年金保険は、契約時に将来受け取れる年金額が決まります。保険会社が設定している予定利率(保険会社が契約者に約束する運用利回り)に基づいて運用されるため、将来設計を立てやすいでしょう。
変額個人年金保険は、運用実績に応じて将来受け取れる年金額や解約返戻金などが変動します。保険会社を通じて投資信託を購入するイメージで、運用しながら将来受け取れる年金額を増やしたいと考えている方に向いています。
外貨建て個人年金保険は、保険料の支払いと年金の受け取りを外貨で行う点が特徴です。日本円よりも金利が高い通貨で運用するため、定額個人年金保険よりも多くの年金を受け取れる可能性があります。
なお、変額個人年金保険と外貨建て個人年金保険は、運用実績や為替レート次第では元本割れが発生する点に注意が必要です。
個人年金保険が「おすすめしない」「やめとけ」といわれる理由とは?
個人年金保険は老後生活に備えるうえで一つの手段となりますが、「おすすめしない」「やめとけ」と言われることがあります。理由も、個人年金保険全般に共通するもの、定額年金保険特有のもの、変額および外貨建て個人年金保険特有のものの大きく3種類があります。
以下で、その理由をそれぞれ解説します。
個人年金保険全般に共通して「おすすめしない」「やめとけ」と言われる3つの理由
まずは、すべての個人年金保険に共通している理由は大きく以下の3つです。
- 予定利率が低く自分で投資をしたほうが資産を増やせる可能性があるから
- 途中解約すると元本割れする場合があるから
- 受け取った年金は課税対象になるから
それぞれについて以下で説明します。
1.予定利率が低く自分で投資をしたほうが資産を増やせる可能性があるから
個人年金保険を活用するより、自分で投資をしたほうが資産を増やせる可能性があります。自分で投資判断を下せる方は、個人年金保険を利用する必要性が低いでしょう。
生命保険会社は、契約時に約束する運用利回りである「予定利率」を定めています。契約者から受け取った保険料をどのくらいの運用利回りで運用できるのかを予測して予定利率を算出し、保険料を割り引いています。
つまり、予定利率が高ければ保険料は安くなり、低ければ保険料は高くなる仕組みです。保険会社が設定している予定利率や市況によっては、自分で資産運用をしたほうが大きな利益を得られます。
例えば、住友生命が販売している個人年金保険の予定利率は2024年9月現在0.8%です。「保険会社が設定している予定利率以上の利回りで運用できる」という方は、自分で投資をしたほうがよいでしょう。
2.途中解約すると元本割れする場合があるから
個人年金保険は契約後に任意のタイミングで解約できますが、途中解約すると多くの場合で元本割れを起こします。たとえば、支払った保険料が100万円で、途中解約に伴って受け取れる解約返戻金が30万円だと70万円の損失です。
契約後にライフイベントが発生して、まとまったお金が必要になる場面もあるでしょう。支出に充てるために個人年金保険を解約すると、損失を被ってしまいます。
結果的に資産を減らして終わってしまうため、個人年金保険に加入する際には長期的に保険料を支払えるか確認することが大切です。
3.受け取った年金は課税対象になるから
受け取った年金は、契約内容に応じて税金が発生します。
契約者(保険料負担者) | 被保険者 | 年金受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
本人 | 本人 | 本人 | 所得税(年金受け取りの場合は雑所得、一括受け取りの場合は一時所得) |
本人 | 本人以外 | 本人 | 所得税(年金受け取りの場合は雑所得、一括受け取りの場合は一時所得) |
本人 | 本人 | 本人以外 | 初年度は贈与税 2年目以降は所得税 |
本人 | 本人以外 | 本人以外 | 初年度は贈与税 2年目以降は所得税 |
なお、それぞれの所得を計算する方法は以下のとおりです。
- 雑所得:総収入金額-必要経費※1
- 一時所得:総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(50万円)×1/2
- 贈与税の対象となる所得:年金受給権評価額※2-基礎控除額(110万円)
※1:必要経費は「年金受取額(年額)×(払込保険料の合計額/年金の総支給見込額)」
※2:解約返戻金や一時金の金額などのうち多い額
税負担を考慮していないと、受け取れると見込んでいた金額と実際に受け取れる手取り金額に乖離が生じてしまいます。
定額年金保険特有の理由:物価変動に対応していない
定額個人年金保険は契約時に将来受け取れる年金額が決まります。インフレが進み、契約時の物価水準よりも年金受取時の物価水準が高ければ、実質的に資産価値が目減りしている可能性があります。
定額個人年金保険には、物価変動率に対応する機能はありません。契約後の一定期間ごとに利率が見直される「利率変動型」の個人年金保険もありますが、多くは外貨建て商品です。
昨今のようにインフレが起きている状況において、定額個人年金保険に加入すると、損をしてしまう可能性が考えられるでしょう。
変額および外貨建て個人年金保険特有の理由:満期運用しても元本割れする可能性
変額個人年金保険と外貨建て個人年金保険は、受け取れる年金額が運用実績や為替レートによって変動します。
運用成績が悪かったり、為替レートが想定よりも円高にシフトしていたりすると、想定よりも受け取れる金額が減ってしまいます。また、元本割れの可能性もあり、必ずしもプラスになるとは限りません。
「必ずしもプラスにならない」という点は、通常の投資にもいえることです。変額個人年金保険や外貨建て個人年金保険に関しては、実質的に保険会社を介して投資信託を購入しているのと同義です。
保険会社を介する分、手数料が徴収されてしまいます。つまり自分で投資したケースと変額個人年金保険に加入したケースを比較すると、運用成績が同じでも保険会社に支払う手数料分、運用者が被るマイナスが大きくなります。
個人年金保険の3つのメリット
個人年金保険には、iDeCoや預貯金にはないメリットが大きく3つあります。ご自身が個人年金保険に向いているか判断する際の、参考にしてみてください。
1.貯蓄が苦手な方でも老後資金を積み立てられる
個人年金保険に加入すると、毎月(契約内容によって半年払いや年払いもある)保険料を支払う必要があります。半強制的に将来に向けて貯蓄できるため、貯蓄が苦手な方でも着実に老後資金を積み立てられるでしょう。
個人年金保険は、契約してから短期間で解約すると元本割れしてしまう点をお伝えしました。「途中で引き出したい」と考えても、元本割れのリスクがあるため、心理的に解約しづらいでしょう。
財形貯蓄や自動振替貯金でも半強制的に貯蓄を行えますが、「途中で引き出すと元本割れする」という特性があるのは個人年金ならではです。貯蓄が苦手な方は、この特性を利用するのも一つの手段といえるでしょう。
2.個人年金保険料控除を受けて税負担を軽減できる
個人年金保険に加入して「個人年金保険料税制適格特約」を付加すれば、個人年金保険料控除を受けられます。所得税で最大40,000円、住民税で最大28,000円の控除を受けられるため、税負担を軽減できます。
なお、個人年金保険料税制適格特約を付加できる条件は以下のとおりです。
- 年金受取人が契約者か、またはその配偶者であること
- 年金受取人が被保険者と同一人であること
- 保険料の払込期間が10年以上であること
- 確定年金・有期年金の場合、年金受取開始が60歳以降で、かつ受取期間が10年以上であること
現役期の税負担を軽減しつつ将来に向けて資産形成を行える点は、預貯金にはない個人年金保険のメリットといえます。
3.利回りをあらかじめ確定させることができる
定額個人年金保険であれば、利回りをあらかじめ確定させることができます。低金利の状況ではリターンが低いデメリットがありますが、契約後一定期間経過すれば元本以上の保険金(年金)を受け取れる確実性の高さはメリットといえるでしょう。
一方で、iDeCoの場合は将来受け取れる年金額が運用成績に応じて変動します(すべて元本確保型商品で運用する場合を除く)。個人年金保険は確実性が高いため、積極的にリスク※を取りたくないと考えている方にとって、向いている可能性が高いでしょう。
また、「将来受け取れる金額を確定させたほうが生活設計しやすい」と考えている方も、個人年金保険の活用を検討する価値があります。
※リスクとは利益と損失が発生する振れ幅のこと。
まとめ
個人年金保険は、予定利率が低く元本割れの可能性があるなどの理由から、ネガティブな意見が聞かれることがあります。
しかし、人によっては老後資金を用意するための有用な手段の一つです。貯蓄が苦手な方でも老後資金を積み立てられ、あらかじめ将来の受取額を確定できる点をメリットに感じる場合、加入を検討する価値があります。
つまり、個人年金保険に加入する必要性の有無は個人によって異なります。メリットとデメリットを理解し、必要と判断した場合は加入を検討してみてください。
柴田充輝
金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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個人年金保険
老後の必要な生活資金に対し、公的年金に上乗せ補完する目的で、自身で準備する保険。保険契約者は、毎月保険料を一定年齢まで払い込み、受取開始時期になると、一定期間または終身にわたって年金形式または一括で受け取ることが可能。 個人年金保険には、運用方法や受取期間などによってさ様々なタイプが存在。
総合課税
納税者の所得を合算し、課税所得を計算する仕組みのことです。具体的には、個人の所得のうち利子所得、配当所得、事業所得、不動産所得、給与所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の8種類(一部例外あり)が対象。 (申告分離課税) 総合課税のようにほかの所得と合算せず、他の所得と分離して所得税を計算する。 (源泉分離課税) 他の所得と分離する所得のうち、所得を支払う者が、納税者に代わって税金を徴収し納める課税方式。