「劣後債」って具体的にどう危ないのでしょうか?
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2025/04/15 15:19
男性
30代
劣後債は、個人投資家にとって具体的にどんな場面で危険になるのですか?他の社債と比べて、どのような違いがありますか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
劣後債は、企業が資金調達のために発行する債券の一種ですが、通常の社債(シニア債)よりも返済順位が低いという特性があります。この「劣後性」があることで、特定の状況下では個人投資家にとって大きなリスクとなる可能性があります。
まず、企業が経営破綻に陥った場合、返済順位の高い債権者(通常の社債保有者や銀行など)への支払いが優先されます。劣後債はその後にようやく返済の対象となるため、企業に残っている資産が不足していれば、元本が一切返ってこない可能性もあります。これは特に、財務基盤が不安定な企業や、景気変動の影響を受けやすい業種の発行体において顕著です。
また、劣後債は一般的に高めの利回りが設定されていますが、これは高リスクに対する補償という位置づけです。「利回りが高い=安全で有利な投資」というわけではなく、「利回りが高い=それだけ損失リスクも大きい」ということを意味しています。
たとえば、ある企業の業績が悪化し、債務超過に陥った場合、通常の社債保有者や銀行からの融資を返済するだけで資産が尽き、劣後債の投資家には何も返済されないという事態も現実に起こり得ます。リーマンショック後や一部の金融機関の破綻時にも、劣後債の元本が回収できなかったケースが多数見られました。
このように、劣後債は通常の社債とは明確に異なるリスク構造を持っており、相応の知識と覚悟がなければ安易に手を出すべきではありません。高利回りに惹かれて投資を決断する前に、発行企業の財務体質や業績動向、自身のリスク許容度を十分に見極めることが重要です。
もし不安がある場合や判断に迷う場合は、資産運用に精通した専門家やファイナンシャルプランナーに相談することを強くおすすめします。リスクとリターンのバランスを客観的に検証したうえで、自身に適した投資かどうかを慎重に判断しましょう。
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劣後債
劣後債とは、企業や金融機関が資金調達のために発行する債券の一種で、通常の社債(シニア債)よりも弁済順位が低い(劣後する)債券のことです。発行体が破綻した場合、一般の債券や他の債権者への支払いが優先され、劣後債の保有者への弁済はその後に行われるため、元本や利息の支払いリスクが相対的に高くなります。 このリスクの高さを補うため、劣後債は通常の社債よりも利回りが高めに設定されており、リスクプレミアムが反映されたハイリスク・ハイリターンの投資対象として位置づけられます。劣後債には、シニア劣後債とジュニア劣後債があり、ジュニア劣後債の方がさらに弁済順位が低いため、リスクが高くなる傾向にあります。 特に、金融機関が発行する劣後債の一部(例:AT1債やTier 2債)は、国際的な銀行規制であるバーゼル規制に基づき、一定の条件を満たせば自己資本として算入できるため、自己資本比率を向上させる手段として利用されています。ただし、AT1債(追加的Tier 1債)は発行体の財務状況によって利息の支払いが停止される可能性もあるため、リスクが高くなります。 投資家にとっては、高い利回りの魅力がある一方で、発行体の信用リスクや市場環境を十分に考慮した慎重な判断が求められる金融商品です。また、流動性が低く、満期前に売却が難しい場合がある点にも注意が必要です。
社債
社債とは、企業が事業資金を調達するために発行する「借金の証書」のようなものです。投資家は社債を購入することで企業にお金を貸し、その見返りとして、あらかじめ決められた利息(クーポン)を一定期間ごとに受け取ることができます。満期が来れば、企業は投資家に元本を返済します。 銀行からの融資とは異なり、社債は不特定多数の投資家から直接資金を集める方法であり、企業にとっては柔軟かつ効率的な資金調達手段です。 投資家にとって社債の魅力は、株式に比べて価格の変動が小さく、定期的な利息収入が得られる点にあります。一方で、発行体である企業が経営破綻した場合、元本が戻らないリスクがあるため、信用格付けや業績などを十分に確認することが重要です。 安定的な収益を目指しつつ、リスク管理も重視する投資家にとって、社債はポートフォリオの中核を担いうる資産クラスのひとつです。
シニア債
シニア債とは、企業が発行する債券の一種で、会社の借金の順番が最も早い「最優先の債券」です。企業がもし倒産してしまった場合、シニア債の持ち主は他の債権者より先にお金を返してもらえる権利を持っています。この安全性の高さから、一般的に他の債券よりもリスクが低く、その分得られる利息(利回り)も少し低めに設定されています。 企業はシニア債を発行して、新しい設備を買ったり、日々の運営資金を確保したり、または過去の借金を整理したりします。投資家にとっては、比較的安定した収入が期待できる投資先となり、株式など他の資産と組み合わせることで、資産運用の安定性を高める役割を果たします。
利回り
利回りとは、投資によって得られる収益を「投資金額に対する割合」で示したものです。ここでいう収益は利息だけでなく、投資商品を売却したときの損益(キャピタルゲインやキャピタルロス)なども含まれます。一般的には、1年間を基準とした「年利回り」として表されることが多いです。 また、利回りには大きく分けて「単利」と「複利」があります。単利は元本に対してのみ利息がつくのに対し、複利は再投資を前提とするため、同じ利率でも長期運用すると結果に大きな違いが出る可能性があります。
元本
元本とは、投資や預金を始めるときに最初に出すお金、つまり「もともとのお金」のことを指します。たとえば、投資信託に10万円を入れた場合、その10万円が元本になります。 運用によって利益が出れば、元本に運用益が加わって資産は増えますが、損失が出れば元本を下回る「元本割れ」の状態になることもあります。 元本が保証されている商品(例:定期預金、個人向け国債など)もありますが、多くの投資商品では元本保証がないため、どれくらいのリスクを取るかを理解しておくことが大切です。