オルタナティブ投資の分散効果について
オルタナティブ投資の分散効果について
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2024/06/07 19:12
男性
60代
現在、株や債券による分散投資を行っています。次はオルタナティブ投資を行って、分散効果をより高めたいと考えていますが、分散効果の仕組みがよくわかっていません。株式や債券とコモディティ投資を組み合わせるとなぜ分散効果があるのか仕組みを教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
資産運用で最も大切なのは、異なる値動きの資産を組み合わせてポートフォリオ全体のブレを抑えることです。統計で用いる「相関係数」は 1 に近いほど同じ方向へ、0 に近いほど独立、0 未満なら逆方向へ動きやすいことを示します。株式と債券は長期的に相関がそれほど高くないため、すでに一定の分散効果がありますが、景気後退や金融ショックなどでは同時に下落する局面もあります。こうした“相関の崩れ”に備える手段として、価格決定要因がまったく異なるオルタナティブ資産を加える意義があります。
コモディティ(原油・金・穀物など)は、供給制約や在庫水準、天候、地政学リスク、インフレ期待といった「実物資産」特有の要因で動きます。たとえばインフレが進むと、債券は利回り上昇に伴い価格が下がりやすい一方、コモディティは名目価格が上がりやすく、逆方向の値動きになりやすい関係が生まれます。また、景気減速で株価が調整している局面でも、産油国の減産や農産物の不作が続けば原油や農産物が底堅く推移し、株式や債券とは異なるリスクプレミアムが得られます。
複数の資産を組み合わせると、個々のボラティリティ(標準偏差)よりもポートフォリオ全体のボラティリティが低下し、同じ期待リターンをより小さなリスクで狙える効率的フロンティアが押し上げられます。これがオルタナティブ投資で語られる分散効果の本質です。
もっとも相関は固定ではなく、市場ストレス時に一時的に高まることもあります。資産配分は目標リスク水準に合わせ、ETF や先物など流動性の高い手段を使い少額から導入し、定期的にリバランスして相関構造の変化に備えることが重要です。
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オルタナティブ投資
オルタナティブ投資とは、伝統的な投資対象である株式や債券以外の資産への投資を指します。主な投資対象には、不動産、インフラ、プライベートエクイティ(未公開株式)、コモディティ(商品市場)、ヘッジファンド、ベンチャーキャピタル、貴金属、仮想通貨などが含まれます。 この投資手法の主な特徴として、伝統的な市場との相関が低いため、ポートフォリオ全体のリスク分散効果が期待できることが挙げられます。また、投資対象や手法の選択肢が広がることで、より柔軟な投資戦略を構築することが可能になります。 ただし、オルタナティブ投資には留意点もあります。一般的に流動性が低い場合が多く、また専門的な知識が必要とされることから、長期的な投資視点を持って取り組む必要があります。
コモディティ
コモディティは、世界で標準化された形で売買される原材料・一次産品の総称で、貴金属(金・銀・プラチナ)、エネルギー資源(原油・天然ガス)、農産物(小麦・トウモロコシ・大豆)、産業用金属(銅・アルミニウム)などに分類される。 投資経路は大きく四つある。①現物保有(地金やコイン)、②先物取引、③商品指数連動型ETF・ETN、④コモディティファンド。実務では先物を組み込んだETFが主流で、代表的な指数にブルームバーグ・コモディティ・インデックスや S\&P GSCI がある。 価格は需給バランス、在庫統計、OPEC政策、地政学リスク、天候、為替など多様な要因で変動する。先物運用では限月乗り換え時のロールコスト(コンタンゴ)や信託報酬がリターンを圧迫し、現物保有では保管・保険料、税制(例:金地金の譲渡益は総合課税)が影響するため、コスト構造の把握が欠かせない。 コモディティは株式・債券との相関が相対的に低く、インフレ率と連動しやすいことから、分散投資とインフレヘッジに有効とされる。一方で短期的な価格変動が大きく、資産配分比率や取引手段を目的に合わせて設計し、損失許容度に応じたリスク管理を徹底することが重要となる。
ボラティリティ
ボラティリティは、投資商品の価格変動の幅を示す重要な指標であり、投資におけるリスクの大きさを測る目安として使われています。一般的に、値動きが大きい商品ほどそのリスクも高くなります。 具体的には、ボラティリティが大きい商品は価格変動が激しく、逆にボラティリティが小さい商品は価格変動が穏やかであることを示します。現代ポートフォリオ理論などでは、このボラティリティを標準偏差という統計的手法で数値化し、それを商品のリスク度合いとして評価するのが一般的です。このため、投資判断においては、ボラティリティの大きい商品は高リスク、小さい商品は低リスクと判断されます。
効率的フロンティア
効率的フロンティアは、複数の資産を組み合わせたポートフォリオのうち、同じリスクで最も高い期待リターンを得る、あるいは同じ期待リターンで最も低いリスクに抑えられる最適な組み合わせを結んだ曲線です。 リスク(通常はリターンの標準偏差)を横軸に、期待リターンを縦軸に取ってポートフォリオをプロットすると、右肩上がりの弓形を描くラインが現れ、この線上のポートフォリオが「効率的」と位置付けられます。フロンティアより下にあるポートフォリオは、同じリスクでリターンが低いか、同じリターンでリスクが高い「非効率」な状態です。 自身の許容リスクや目標リターンを踏まえて効率的フロンティア上からポートフォリオを選択すれば、無駄なリスクを避けつつ合理的な資産配分が可能になります。リスクとリターンの関係をデータで可視化し、根拠をもった運用方針を立てるうえで欠かせない概念です。
リバランス
リバランスとは、ポートフォリオを構築した後、市場の変動によって変化した資産配分比率を当初設定した目標比率に戻す投資手法です。 具体的には、値上がりした資産や銘柄を売却し、値下がりした資産や銘柄を買い増すことで、ポートフォリオ全体の資産構成比率を維持します。これは過剰なリスクを回避し、ポートフォリオの安定性を保つためのリスク管理手法として、定期的に実施されます。 例えば、株式が上昇して目標比率を超えた場合、その一部を売却して債券や現金に再配分するといった調整を行います。なお、近年では自動リバランス機能を提供する投資サービスも登場しています。

