時間を味方につけてリスク回避!ドルコスト平均法のメリット、デメリットを徹底解説
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執筆者:
公開:
2023.04.02
更新:
2024.10.16
目次
ドルコスト平均法とは、価格が変動する金融商品(株式や投資信託等)に対する投資手法の1つです。金融商品を1度に購入するのではなく、一定期間ごとに一定金額の金融商品を購入し続ける手法を指します。
例えば、10万円の投資を実施するときに、一度に10万円分の商品を購入するのではなく、毎月1万円ずつ10回に分けて商品を購入する、といったイメージです。
同じ数量の金融商品を買うのではなく、同じ金額で金融商品を買い続けるので、その時々の価格に従い購入数量は異なります。
ドルコスト平均法という名前は、アメリカの「dollar cost averaging」という用語を直訳したことに由来します。イギリスでは「ポンドコスト平均法(pound-cost averaging)」と呼ばれるほか、特定の通貨単位(unit)に基づかない「unit cost averaging」と呼ばれることもあります。(日本円で投資する場合は円コスト平均法と呼んでもいいかもしれないですね(笑))
ドルコスト平均法の仕組みを具体例で解説
ドルコスト平均法をわかりやすく説明するために、架空の金融商品Aを取り上げてみます。
金融商品Aは、以下のような値動きをする金融商品です。一時的に値上がりしたものの、その後は値下がり傾向が続き、12ヶ月目には、1ヶ月目の価格の6割にまで落ち込んでしまいました。
一括で購入した場合
もしこの商品Aを、ドルコスト平均法を使わず、1ヶ月目に120万円分を一括購入していた場合、12ヶ月目の評価額と投資損益は次の通りになります。
- 投資元本:120万円(120万円×1回)
- 総購入口数:60口
- 12ヶ月目における評価額:72万円(1.2万円×60口)
- 12ヶ月目における投資損益:48万円の損失(評価額72万円-投資元本120万円)
- 金融商品Aの値下がりの影響により、48万円の投資損失となってしまいました
金融商品Aの値下がりの影響により、48万円の投資損失となってしまいました
ドルコスト平均法を利用した場合
では、次に、同じ商品をドルコスト平均法を使って、毎月10万円ずつ購入していた場合を考えてみます。
- 投資元本:120万円(10万円×12回)
- 総購入口数:104.6口
- 12ヶ月目時点の評価額:1,254,666円(1.2万円×104.6口)
- 12ヶ月目時点の投資損益:約5.4万円の利益(評価額約125.4万円-投資元本120万円)
- 同じ金融商品、同じ投資元本、同じ投資期間であるにも関わらず、ドルコスト平均法を活用することで、投資損益が黒字になりました。
このように、ドルコスト平均法は、価格の低いタイミングで購入する数量を増やし、高いタイミングで購入する数量を減らすことにより、長期的な価格変動リスクを抑えることができます。
ドルコスト平均法は初心者でも着実に利益を狙える投資手法
この記事を読まれている方の中には、価格が下がったタイミングで一括投資する方が、ドルコスト平均法を用いて投資をするよりも大きなリターンを得られるのではないか、と考える方もいらっしゃるかと思います。結果だけを考えればその通りですが、現実にはそのタイミングを見極めるのは簡単ではありません。
以下のグラフは、2010年1月から2021年1月まで、日経平均株価に連動したETFにドルコスト平均法のを用いて投資したときの購入単価の推移と、ETFの基準価額(=その時点で一括投資した時の購入単価)の推移を示したグラフです。
基準価額は大きく変動しているのに対し、購入単価(ドルコスト平均法)は緩やかに変動していることがわかります。
また、2010年1月から2012年12月までは、基本的に購入単価(ドルコスト平均法)より基準価額の方が大きいですが、2013年1月(上図の黒線)以降は、基準価額より購入単価(ドルコスト平均法)の方が大きくなっています。
つまり、2012年12月までに一括投資をしていれば、ドルコスト平均法の購入単価よりも安い価格で投資をすることができますが、2013年1月以降は、ドルコスト平均法の購入単価よりも安い価格で一括投資できるタイミングは一度もなかった、 ということです。当時、こうなることを予想することは、多くの投資家にとっては難しかったのではないでしょうか。
このように、ドルコスト平均法は、時間を味方につけることで、価格変動リスクを抑えながら、売買タイミングの見極めなくとも、中長期的に利益を着実に獲得できる手法です。そのため、中長期的に資産を形成したい投資家や投資初心者に向いている投資手法といえます
ナンピン買いとの違い
ナンピン(難平)買いとは、保有する金融商品の価格が下がったときに、その金融商品をさらに買い増すことで、「平均購入単価(平均取得単価)」を引き下げることを目的とした投資手法です。
例えば、10,000円で100口購入した金融商品が、8,000円まで価格が下がったときに、さらに追加で100口購入することで、平均購入単価を9,000円まで押し下げます。平均購入単価=利益獲得水準のため、平均購入単価が下がれば、利益を獲得しやすくなるといえます。
ナンピン買いは、金融商品の値動きが上昇傾向にある時は大幅な利益獲得を目指せますが、下落傾向の時は損失が拡大してしまいます。そのため、ナンピン買いをするタイミングが重要となります。ナンピン買いは短期的に大きなリターンを求める投資家に向いている投資手法といえるでしょう。
ドルコスト平均法のメリットとデメリットについて
メリット
①価格変動リスクを抑えられる
購入するタイミングを分散させ、価格の低いタイミングで購入する数量を増やし、高いタイミングで購入する数量を減らすことにより、中長期的に見たときに価格変動リスクを抑える効果が期待できます。
②価格の下落傾向が続くと、一括投資と比較して収益が増加する
価格の下落傾向が続くと、平均購入単価が低くなるので、一括で投資するときと比較して収益が増加します。
③定期・定額購入のため、投資労力が少ない。
定期・定額購入のため、一度始めてしまえば投資に対する労力はほとんどかかりません。なお、銀行や証券会社が提供する自動積立サービスを利用することで、定期・定額購入自体を自動化することができます。
デメリット
①短期間で大きなリターンを獲得することは難しい
購入タイミングを分散化させることで、平均購入単価が平準化されるという特性上、短期間で大きなリターンを獲得することは難しいです。
②価格の上昇傾向が続くと、一括投資と比較して収益が減少する
価格の上昇傾向が続くと、平均購入単価が高くなるので、一括で投資するときと比較して収益が増加します。
③取引手数料がかさむ可能性がある
取引手数料が、「1回あたり○円」といった形式の場合、一括で投資するときと比較して取引回数が多くなる分、取引手数料が嵩む可能性があります。
なお、投資信託の購入時手数料は、「取引金額×○%」という形式が多く、また最近はノーロード(購入時手数料0円)の商品も存在するため、このデメリットが当てはまらないケースも存在します。
④一つの商品に対する集中投資によるリスク増加
同一の商品を一定期間購入し続けるという特性上、一つの商品に対するリスクを取り続けることになります。例えば1社の株式に対してドルコスト平均法に基づき投資をするような場合には、ポートフォリオ全体を見たときに過度にリスクを取りすぎていないかを検討する必要があります
ドルコスト平均法の実践方法
ドルコスト平均法の実践方法のおすすめは、投資信託の自動積立サービスの利用です。定期的に決まった金額を積立投資をできるサービスとして、多くの金融機関が提供しています。
主要な金融機関が提供する投資信託自動積立サービスは以下の通りです。
金融機関名 | サービス名 |
---|---|
三菱UFJ銀行 | 投信つみたて |
三井住友銀行 | 投信自動積立 |
みずほ銀行 | みずほ積立投信 |
ゆうちょ銀行 | 投資信託自動積立 |
野村証券 | 投信積立 |
大和証券 | 投信積立サービス |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | 投信積立取引『らくだくん』 |
SMBC日興証券 | 投信つみたてプラン |
みずほ証券 | みずほdeつみたて バランスくん |
東海東京証券 | ファンド・ツミタテ |
SBI証券 | 投信積立 |
楽天証券 | 投信積立 |
マネックス証券 | 投信つみたて |
まとめ
- ドルコスト平均法とは、金融商品を1度に購入するのではなく、一定期間ごとに、金融商品を一定金額購入し続ける手法。
- 購入のタイミングを分散させ、価格の低いタイミングで購入数量を増やし、価格の高いタイミングで購入数量を減らすことにより、中長期では価格変動リスクを軽減。
- 一方、少額を積み立てて投資することにより平均購入単価が平準化されるという特性上、短期間で大きなリターンを獲得することは困難。
投資のコンシェルジュ編集部
MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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