資産運用に欠かせない「インデックス」とは?初心者向けにわかりやすく解説
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公開:
2025.01.09
更新:
2025.01.09
目次
インデックスとは?市場や資産クラス全体のパフォーマンス測定指標
インデックスの透明性と客観性を担保するために実施されていること
主なインデックスプロバイダー(作成者)と代表的なインデックス
MSCI Inc.(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)
資産運用をするうえで、「インデックス」は欠かせない存在です。多くの投資信託やETF(上場投資信託)は、インデックスを基に設計されています。
しかし、「インデックスとは何か?」「どのように作成され、どのように活用されるのか?」について詳しく理解している方は少ないかもしれません。
本記事では、資産運用初心者にもわかりやすく、インデックスの作成方法や活用法を具体的に解説します。
インデックスとは?市場や資産クラス全体のパフォーマンス測定指標
インデックスとは、特定の市場や資産クラス全体のパフォーマンスを測定する指標です。株式市場や債券市場、不動産市場などで広く活用されており、代表的な例として米国のS&P 500や日本のTOPIXがあります。
インデックスは特定のルールに基づいて構成銘柄を選定し、市場全体の動向を反映するよう設計されています。これにより、透明性と効率性を提供し、投資家が市場全体を把握するための重要なツールとして活用されています。
例えば、トヨタ自動車の株価が上昇しても、他の業種や中小型株が低迷している場合、日本株全体が好調とは言えません。しかし、TOPIXのようなインデックスはこれらすべての動きを反映するため、日本市場全体の動向を正確に捉えることが可能です。
金融のインデックスの主な活用方法
インデックスが資産運用において、どのように活用されているかここではその具体例について解説します。
アクティブ運用へのベンチマークの提供
インデックスは資産運用や投資パフォーマンスを評価する際の基準値「ベンチマーク」としての役割を担います。そのお陰で、投資家や運用者は、自分の運用成績が市場全体の動向と比較して良いのか悪いのかを客観的に判断できます。
パッシブ運用(インデックス投資)の基盤としての役割
インデックスを基に設計された投資信託やETFは、市場平均のリターンを目指すパッシブ運用の基盤となります。このような商品は低コストで効率的な運用を可能にします。
経済指標として経済全体や特定業界の健全性を測る役割
インデックスは、経済全体や特定業界の健全性を測る指標としても利用されます。たとえば、株価指数の変化を通じて、国や地域の景気動向を把握することができます。
投資対象で分類するインデックスの種類
インデックスは、その分類方法に応じて以下のように分類できます。
市場全体型
市場全体型インデックスは、特定の市場全体を代表する銘柄を選定して構成されます。S&P 500(米国の主要企業500社)、日経平均株価(日本の上場企業225社)などがこれに該当します。
セクター型
産業分類(例:金融、エネルギー、ITなど)を基に銘柄を選定して構成されます。S&P 500 Information Technology Index(ITセクター)、MSCI Energy Index(エネルギーセクター)などがこれに該当します。
地域型
地理的な条件(例:国、地域、発展段階など)を基に銘柄を選定して構成されます。 MSCI Asia Pacific Index(アジア太平洋地域)、FTSE 100(イギリス)などがこれに該当します。
時価総額加重型
時価総額加重型は、各銘柄の時価総額に基づいて比率が設定されるタイプのインデックスです。S&P 500などがこれに該当します。時価総額の大きな安定企業がインデックスに大きな影響を与え、市場全体の成長を追随しやすいのが特徴です。
均等加重型
均等加重型は、インデックス構成銘柄に同じ比率でウェイトを割り当てるタイプのインデックスです。S&P 500 Equal Weight Indexなどがこれに該当します。中小型株の影響が相対的に大きくなるのが特徴です。
価格加重型
価格加重型は、構成銘柄の株価を基準に計算されるインデックスで、株価の高い銘柄がインデックス全体により大きな影響を与えます。ダウ工業株30種平均(Dow Jones Industrial Average, DJIA)、日経平均株価(Nikkei 225)などがこれに該当します。株価の高い銘柄がインデックス全体に与える影響が大きくなるのが特徴です。
インデックスの構成銘柄の選定時に考慮されていること
インデックスはその設計意図に応じて採用される銘柄が厳選されます。その際には、「リスク管理」と「取引コストの最小化」が特に重要な基準として考慮されます。これらの基準を満たすことで、投資信託やETFが効率的かつ安定的に運用される基盤が整えられます。以下では、それぞれの観点から具体的に解説します。
1. リスク管理:安定性を重視した銘柄選定
リスク管理は、インデックス設計において重要な役割を果たします。特定のリスク要因を排除することで、インデックスを基にした投資信託やETFが安定したパフォーマンスを維持できるよう設計されています。
財務状況が不安定な銘柄の除外
インデックスに採用される銘柄は、財務的に安定していることが求められます。債務超過や継続的な赤字など、財務状況に問題がある企業は、倒産リスクや市場の信頼性低下を招く可能性があるため、選定基準から除外されます。
規制リスクが高い業種の回避
一部の業種や企業は、政府の規制強化や法改正の影響を受けやすい場合があります。たとえば、エネルギー企業や新興市場の特定業界が該当します。これにより、予測可能な運用環境を提供します。
セクターや地域の偏りを緩和
市場全体を反映するインデックスでは、特定のセクターや地域に偏らないよう設計が工夫されます。これにより、一部の市場リスクがインデックス全体に過剰な影響を与えることを防ぎます。
一方、特定のセクターや地域をターゲットとするインデックスでは、意図的に偏りが設計される場合もあります。このような場合、分散は必須ではなく、リスクの集中が特徴として考慮されます。
2. 取引コストを最小化する
インデックス設計では、投資信託やETFの運用効率を高めるため、取引コストを削減する基準が設けられています。これにより、投資家にとってのコスト負担が軽減され、投資信託やETFを通じて市場全体のリターンを効率的に目指すことが可能となります。
流動性の高い銘柄を選定
売買が容易で、スプレッド(買値と売値の差)が狭い銘柄が優先されます。これにより、大量の取引が行われても価格変動を抑え、運用の安定性が向上します。
浮動株を重視した構成
市場で取引可能な浮動株比率を基に銘柄を選定します。大株主の持ち分を除外することで、実際の市場流動性を反映したインデックスが構築されます。
売買頻度を抑える設計
銘柄の頻繁な入れ替えやリバランスは、運用コストを増大させます。そのため、インデックス構成を安定的に保つことで、取引頻度を最小限に抑えます。
採用銘柄の安定性を確保
採用される銘柄は、長期的に基準を満たし続ける安定性が求められます。一時的な時価総額の変動や取引量の減少による除外が発生しないよう、基準を慎重に設定することで、運用の安定性が保たれます。
手数料が高い市場や銘柄を回避
取引コストを削減するため、取引税や手数料が高い市場や、価格変動が大きくリスクの高い銘柄は避けられる傾向があります。これにより、投資家が余計なコストを負担するリスクが軽減されます。
インデックスの透明性と客観性を担保するために実施されていること
明確な採用基準の設定と公開
インデックスの透明性を確保するために、採用銘柄の基準を明確かつ一貫性のある形で設定することが重要です。流動性や時価総額、業種分類などの具体的な基準が定義され、投資家に理解可能な形で公開されます。これにより、恣意的な選定を排除できます。
ルールベースでの設計
インデックスは客観的なルールに基づいて設計されます。主観的な判断を避け、明確な基準に従った構成とすることで、公平性と信頼性を確保します。採用基準やウェイト計算方法の公表も、透明性を担保する重要な要素です。
第三者機関による監査とガバナンスの整備
インデックスの構築プロセスは第三者機関によって監査される場合があります。また、利益相反を防ぐ独立したガバナンス体制の整備により、中立性を担保します。これにより、設計者が企業や運用者からの影響を受けることがなくなります。
情報の公開と共有
インデックスの設計意図や運用プロセスに関する情報を、プロバイダーのウェブサイトやレポートを通じて適時に公開します。投資家が設計意図や変更内容を把握できるよう、採用銘柄や構成比率、過去のパフォーマンスの詳細が提供されます。
過去のパフォーマンスの提供
インデックスのバックテスト結果や過去のパフォーマンスを公開することで、投資家がその特性やリスクを事前に理解できるようにします。これにより、インデックスの信頼性がさらに高まります。
主なインデックスプロバイダー(作成者)と代表的なインデックス
金融のインデックスは、インデックスプロバイダーにより提供されています。ここでは主なインデックスプロバイダーと代表的なインデックスを紹介します。
MSCI Inc.(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)
MSCIは、世界的に広く利用されるインデックスを提供しており、特にグローバル市場やセクター別インデックスで高い評価を得ています。ESG(環境・社会・ガバナンス)やテーマ別インデックスの分野でもリーダー的存在です。
代表的なインデックス:
MSCI World Index: 世界23か国の先進国市場を対象とした株式インデックス。
MSCI Emerging Markets Index: 26か国の新興国市場をカバー。
MSCI ACWI Index: 世界全体(先進国+新興国)を対象。
S&P Dow Jones Indices
世界的に有名なS&P 500やダウ工業株30種平均を提供する企業で、アメリカ市場に関するインデックスが特に有名です。セクター別やテーマ型のインデックスも多岐にわたります。
代表的なインデックス:
S&P 500: 米国の大型株500銘柄をカバーし、アメリカ市場の指標とされる。
Dow Jones Industrial Average (DJIA): アメリカの代表的な30銘柄で構成される歴史的なインデックス。
S&P Global Clean Energy Index: クリーンエネルギー企業に特化したテーマ型インデックス。
FTSE Russell
FTSE(Financial Times Stock Exchange)はロンドン証券取引所グループの一部で、イギリスをはじめとするグローバル市場向けのインデックスを提供しています。スマートベータやESG関連のインデックスも豊富です。
代表的なインデックス:
FTSE 100: ロンドン証券取引所に上場するイギリスの大型株100銘柄。
Russell 2000: 米国の小型株市場を対象。
FTSE All-World Index: 世界の株式市場を広範にカバー。
Bloomberg Index Services
主に債券市場のインデックスで知られ、債券投資家にとっての主要な指標を提供しています。近年ではコモディティやマルチアセットインデックスも強化。
代表的なインデックス:
Bloomberg Barclays Global Aggregate Bond Index: 世界の投資適格債券市場を対象。
Bloomberg Commodity Index: 主要なコモディティ市場を対象。
STOXX (Qontigo)
ドイツ証券取引所グループが運営しており、ヨーロッパ市場を中心に広範なインデックスを提供しています。ESGやテーマ型インデックスの開発にも積極的。
代表的なインデックス:
EURO STOXX 50: ユーロ圏を代表する大型株50銘柄。
STOXX Europe 600: ヨーロッパ全体をカバーする広範なインデックス。
Nikkei Inc.(日本経済新聞社)
日本市場を代表するインデックスを提供しています。特に日経平均株価は、日本の株式市場を示す指標として広く認識されています。
代表的なインデックス:
日経平均株価(Nikkei 225): 日本市場を代表する225銘柄で構成。
日経ジャスダック平均: 日本の新興企業市場を対象。
TOPIX(東京証券取引所)
東京証券取引所が提供するインデックスで、日本市場を包括的にカバーします。浮動株時価総額を基に設計されています。
代表的なインデックス:
TOPIX(東証株価指数): 東証プライム市場上場全銘柄を対象。
TOPIX Core30: 東証プライム市場の主要30銘柄を対象。
CRSP(Center for Research in Security Prices)
アメリカの学術研究機関が提供するインデックスで、ファクター投資やスタイル別インデックスに強みがあります。
代表的なインデックス:
CRSP US Total Market Index: 米国市場全体をカバー。
CRSP US Small Cap Index: 米国の小型株に特化。
まとめ
資産運用におけるインデックスは、市場のパフォーマンスを測定し、投資成果を評価するための重要なツールです。その作成には透明性のあるルールが用いられ、投資家にとって使いやすい形で提供されています。
また、インデックスを基にした投資商品を活用することで、効率的かつ低コストな運用が可能となります。一方で、市場全体の動向に依存する点や、一部の大型銘柄に偏りが生じる可能性がある点には注意が必要です。
これらを踏まえ、インデックスを賢く活用することで、より良い投資成果を目指しましょう。
投資のコンシェルジュ編集部
MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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関連質問
関連する専門用語
インデックス
インデックス(Index)とは指標という意味で、金融用語では特に市場の動きを判断する指標を意味する
トラッキングエラー
インデックス・ファンドに代表されるパッシブ運用の投資信託(ファンド)の、ベンチマークからの乖離(かいり)のこと。 パッシブ運用の投信は、ベンチマークの動きにできるだけ近似するように設計されていますが、種々の理由で完全には一致しないケースがあり、この誤差のことをトラッキング・エラーと呼ぶ。 通常は当該ファンドのリターンとベンチマークのリターンとの差異を年率標準偏差で測定。 数値が大きいほど、ファンドの動きがベンチマークから乖離していたことを示す。
インデックスファンド
インデックスファンドとは、比較のために用いる指標であるベンチマーク(日経平均やNASDAQなど)と同様の動きを目標とするインデックス投資(パッシブ投資)を行うファンド。手数料はアクティブファンドに比べて低く設定されていることが多い。
投資信託
投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品。 その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組み。 集めた資金をどのような対象に投資するかについては、投資信託ごとの運用方針に基づき専門家が行う。
時価総額
時価総額、株式時価総額とは、ある上場企業の株価に発行済株式数を掛けたものであり、企業価値や規模を評価する際の指標。 時価総額が大きいということは、業績だけではなく将来の成長に対する期待も大きいことを意味する。
浮動株
各企業の上場株式のうち、実際に売買される可能性の高い株式(上場株式から固定株を控除したもの)
アクティブ運用
アクティブ運用とは、投資信託を選ぶ際の運用手法の一つ(対義語:パッシブ運用)。比較のために用いる指標であるベンチマーク(日経平均やNASDAQなど)を上回る成績を目指す運用手法。アクティブ運用にはトップダウンアプローチとボトムアップアプローチという2つの手法が主に用いられる。トップダウンアプローチは市場全体を俯瞰して投資環境の予想から投資対象を決める手法で、ボトムアップアプローチは選択する企業に個別に調査や訪問をして投資対象を決める手法である。アクティブ運用はパッシブ運用に比べて高いリターンが望めるがその分リスクも大きいという特徴がある。
パッシブ運用
パッシブ運用とは、投資信託を選ぶ際の運用手法の一つ(対義語:アクティブ運用)。比較のために用いる指標であるベンチマーク(日経平均やNASDAQなど)と同様の動きを目標とする運用手法で、組み入れ銘柄数は多くなる傾向がある。パッシブ運用はアクティブ運用に比べて販売手数料や信託報酬などのコストは安くて済むが、リスクが分散される分、リターンも小さくなるという特徴がある。
リバランス
ポートフォリオを構築した後、相場変動などで変化した投資配分比率を見直し、値上がりした資産・銘柄を売り、値下がりをした資産・銘柄を買い増す、などによって、ポートフォリオの構成を同じ比率に維持していく手法。