毎月分配型投資信託は最強?問題点とデメリットも把握して正しく使おう
執筆者:
公開:
2024.12.31
更新:
2024.12.31
毎月分配型の投資信託とは、その名の通り、毎月分配金を出す投資信託です。
2000年代に5兆円を集めた「グローバルソブリンオープン」が人気となり、多くの投資家が毎月分配型の投資信託で運用をしました。毎月分配金が出るので、「生活費にあてられる」「年金の足しになる」として爆発的に人気になったのです。
しかし、現在、毎月分配型の投資信託は下火になっています。金融庁が毎月分配型の投資信託に警告を出し、証券会社や銀行などの販売会社が販売を抑制しているからです。
本記事では、毎月分配型投資信託の仕組みや注意点、どのようなケースでメリットがあるのか、といったことを解説します。
毎月分配型投資信託の分配金の仕組み
投資信託の分配金は、投資家から集めた資産の運用によって得られた収益を、定期的に投資家に還元するものです。この収益には、株式の配当金、債券の利子といったインカムゲイン、有価証券の売買益であるキャピタルゲインが含まれます。
一般的には投資信託の決算は「年に1回」行われますが、毎月分配型の投資信託は毎月決算を行い、分配金も毎月発生します。
毎月分配金が発生する、ということは、一見すると非常に良いもののように見えますが、必ずしもメリットとは限りません。分配金には2つの種類があり注意が必要です。
運用した結果得られた収益が分配される「普通分配金」
普通分配金とは、投資信託の運用で得た利益を分配金に当てるものです。利益から分配金を出しているため、税金がかかります。
普通分配は利益から出しているので、元本が欠損することはありません。
毎月分配型投資信託を購入する人は、普通分配金が毎月出ることを期待して投資するのではないでしょうか?しかし、もう1つのパターンが重要です。
収益が足りず元本を切り崩す「特別分配金(元本払戻金)」
特別分配金(元本払戻金)とは、利益ではなく、投資信託の元本を分配金に当てているものです。元本を取り崩している、つまり預かったお金を返しているだけなので、税金はかかりません。
しかし、元本を払い出しているため、投資元本が減ってしまい、運用効率もどんどん悪化していきます。投資家は「毎月同じ金額の分配金が出ているので安心」と勘違いしがちです。しかし、実際は投資元本が減っているだけなのに、信託報酬などの手数料も取られている、といった事態になっている可能性もあるのです。
特別分配金は、元本を取り崩しており利益ではない、という点で非常に問題があります。
毎月分配型投信のメリットは資産を取り崩しながら運用ができること
毎月分配型投資信託は毎月分配金が入るため、「生活の足しになる」「年金の足しになる」といったニーズに応えて人気が出ました。
表面的にはその通りなのですが、毎月分配金が入るということは、資産を取り崩しながら運用が自動でできるということです。貯金をただ毎月一定額切り崩すよりは、資産運用しながら切り崩したほうが資産寿命は長くなる傾向にあります。
投資信託の値上がり益だけでなく、毎月分配金が入ることで、切り崩しながら資産運用できるという点は、毎月分配型投資信託の大きなメリットになります。
毎月分配型投信のデメリット
毎月分配型の投資信託の主なデメリットは5つあります。
毎月分配型投資信託は複利効果が非常に得づらい
毎月分配型の投資信託は毎月分配金を出すため、投資元本が増えづらくなってしまいます。
投資で大きな利益を得るためには、運用益を再投資して元本をどんどん増やしていく複利効果が効果的です。
金利や利息には2つの付き方があります。
- 単利:元本のみに利息が付く
- 複利:元本+利息に金利が付く
一見すると大きな違いはないと思われるかもしれません。しかし長期間でみれば見るほど単利と複利には大きな違いがあるのです。
実額で単利と複利がどのくらい違うかについて説明します。例として年率3%の運用を1年更新で10年間、100万円投資をした場合について以下のような違いがあります。
単利 | 複利 | |
---|---|---|
1年後の元本と利息 | 1.030,000円 | 1.030,000円 |
3年後の元本と利息 | 1,090,000円 | 1,092,700円 |
5年後の元本と利息 | 1,150,000円 | 1,159,274円 |
7年後の元本と利息 | 1,210,000円 | 1,229,874円 |
10年後の元本と利息 | 1,300,000円 | 1,343,916円 |
期間が短い時はあまり違いはありませんが、10年という期間になると同じ金額を同じ金利で同じ期間預けているのに、43,916円もの違いが出るのです。
このように複利の効果が大きいことが分かって頂けたかと思います。
毎月分配金を出してしまうと、この複利効果が得づらくなってしまうのは大きなデメリットです。
毎月分配型投信を新NISAでは購入できない
毎月分配型の投資信託は金融庁が指定する新NISA対象の投資信託に含まれません。そのため、毎月分配型の投資信託は、新NISAの利用ができないため、課税口座で購入する必要があります。
普通分配金は利益から出しているので、一見すると良いもののように見えますが、分配金を受け取るたびに税金がかかってしまいます。
一方、分配金を出さない投資信託は、毎月税金がかかることがないので、投資元本をどんどん増やせるので運用効率が良いです。
新NISAで購入できないことから運用の効率が悪くなってしまうということも、毎月分配型の投資信託のデメリットでしょう。
銀行・証券会社によっては支店長の面談が必須
毎月分配型の投資信託は金融庁から警告を受けているため、銀行や証券会社によっては支店長の面談が必須になっています。なぜ警告を受けているかというと、運用益を再投資しないので運用の効率が悪いこと、元本払戻金(特別分配金)を利益と勘違いしている投資家がいることが挙げられます。
対面型の証券会社や銀行で購入する場合、すぐに購入ができないのも毎月分配型投資信託のデメリットになってしまうでしょう。
毎月分配型投信は信託報酬が高いファンドが多い
毎月分配型の投資信託は、一般的に信託報酬が高いファンドが多いです。
信託報酬は投資信託の保有額に一定割合でかかる費用です。購入時や解約時の手数料に比べて目に見えづらい費用になるため、気にしていない方もいるかもしれません。
しかし、信託報酬は長期間投資信託を保有すればするほど運用実績に大きな影響を与えます。
仮に信託報酬が年率1%だとして、投資信託の基準価額が年間2%上がったとします。その場合、投資家の得られる利回りは約年1%です。仮に基準価額が1%値下がりしていたら、信託報酬分を引いて約2%の値下がりです。
信託報酬が大きいと、それだけ投資信託自体の成果が大きく上がらなければ投資家が損をしやすい仕組みとなってしまいます。
信託報酬が高いファンドが多いのも、毎月分配型の投資信託のデメリットです。
毎月分配型投資信託購入時の注意点
毎月分配型投資信託を購入する場合の注意点は主に3つあります。
信託報酬が低いものを選ぶ
毎月分配型の投資信託を購入するのであれば、信託報酬が低いものを選びましょう。
同じような投資信託でも投資信託によって信託報酬は全く異なります。極力、信託報酬が低いものを選ぶようにしてください。
実績のあるファンドを選ぶ
毎月分配型の投資信託を購入するのであれば、元本払戻金ではなくしっかりと普通分配金を出しているファンドを選ぶのが重要です。
元本払戻金は税金がかからないので、一見すると手取りが増えると錯覚しがちですが、元本がどんどん減ってしまいます。もし毎月分配型の投資信託で運用するのであれば、普通分配金の支払い実績のあるファンドを選ぶのが良いでしょう。
まとめ:毎月分配金が欲しい人にはメリットがあるがデメリットが大きい
今回は、一昔前非常に人気が高かった毎月分配型の投資信託について紹介をしました。
「生活費の足しになる」「年金の足しになる」など、毎月分配型の投資信託に魅力を感じるのはわかります。しかし、複利効果が得づらい、元本を取り崩して分配金を出しているケースも多いなど、毎月分配型の投資信託は大きなデメリットがあります。
どうしても毎月分配金が欲しいという場合でも、慎重に選ぶのが良いでしょう。
投資のコンシェルジュ編集部
MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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関連する専門用語
利回り
投資金額に対する収益の割合のこと。この収益には「利息」だけでなく、投資商品を売却した場合に得られる「売却損益」も含む。通常は1年間の「年利回り」のことを利回りと呼ぶことが多い。利回りには単利と複利が存在する。
分配金
投資信託の収益から投資家に還元するお金のこと。 決算時に支払われるのが一般的。 ただし、運用成果や今後の運用戦略を考慮したうえで運用会社が決めるため、決算期ごとに毎回支払われるとは限らず、金額も未定。 分配金の支払い原資は投資信託の資産であり、分配金を支払うと資産は減る。 このため、分配金を支払うことで、その分だけ基準価額が下がる。
個別元本
個別元本とは、投資信託を購入したときの基準価額のことをいいます。販売手数料は購入時支払い金額から控除されて計算されます。投資信託の追加購入(分配金の再投資を含む)や、収益分配時に元本払戻金(特別分配金)を受け取った場合には、受益権口数で加重平均することで個別元本も再計算し修正されます。複数の販売会社で同一の投資信託を購入された場合、販売会社ごとに個別元本が算出されます。申込コースが違う場合(分配金受取コース、分配金再投資コース等)も、コースごとに個別元本が算出されます。また、受益者が特別分配金を受け取った場合、個別元本から特別分配金額を控除した額がその後の個別元本となります。
複利
利息などの運用成果を元本に加え、その合計額を新たな元本として収益拡大を図る効果。利息が利息を生むメリットがあり、運用成果をその都度受け取る単利に比べ、高い収益を期待できるのが特徴。短期間では両者の差は小さいものの、期間が長くなるほどその差は大きくなる。
利率
額面金額に対する毎年受取る利息の割合のこと。クーポンとも言う。 債券の利率は、発行するときの金利水準や発行体の信用力等に応じて決定。