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家族信託とは?メリット・デメリットと仕組みを解説

家族信託とは?メリット・デメリットと仕組みを解説

難易度:

執筆者:

公開:

2024.07.19

更新:

2024.10.01

家族信託生前贈与遺言

目次

家族信託とは、どんな仕組み?

信託の仕組み

家族信託の特徴

家族信託が良く使われるケース

家族信託のメリットとデメリットを比較

家族信託のメリット4選

家族信託のデメリット4選

遺言信託と家族信託の違い

遺言信託とは?金融機関が遺言状に基づきの財産分与を実施

家族信託は存命中から効力を発揮

まとめ

「自分が認知症になった際に、財産の管理を任せたい親族がいる」「自分に万が一のことがあった際に、スムーズに特定の親族に財産を承継したい」「財産を子供ではなく孫に相続したい」と思ったことはありませんか。

現金だけにとどまらず不動産や有価証券などの財産を保有していると、年齢を重ねるにつれて管理や相続に関する悩みが出てきます。家族信託は、このような財産における課題を解決するための信託です。

信託というとなかなか馴染みのない人も多いですが、この記事では家族信託の特徴やメリット・デメリット、また、混同されやすい遺言信託との違いについてわかりやすく解説しています。

ぜひ、最後までお読みください。

家族信託とは、どんな仕組み?

ここでは、そもそも信託がどのような仕組みか、また、家族信託にはどのような特徴があるのかについて説明しています。

信託の仕組み

信託とは、ある人(委託者)の財産を、信頼できる第三者(受託者)に託し、指定した人(受益者)の利益のために管理・運用・処分をしてもらう制度のことです。

信託は「委託者」「受託者」「受益者」の3者がいることで成り立ちます。

名称説明
委託者(イタクシャ)財産管理を信頼できる第三者に依頼する人。財産の本来の保有者です。
受託者(ジュタクシャ)委託者から預かった財産を受益者のために管理・運用・処分する人です。
受益者(ジュエキシャ)受託者が管理する信託から利益を受け取る人です。

信託における委託者・受託者・受益者の関係図

受託者は委託者から財産を預かり、受益者の利益の為に管理を行いますが、委託者が安心して財産の管理を任せることができるよう、法的に厳しい義務があります。

また、一般的な信託契約の登場人物は3者ですが、図1のように第三者を受益者とするのではなく図2のように委託者を委託者兼受益者とすることもできます。

信託における、委託者と受益者が同じ場合の受託者との関係図

家族信託の特徴

家族信託は、財産の管理・運用・処分を信頼できる別の家族や第三者に託すことのできる信託です。特徴として、信託契約の内容を家族の事情にあわせて柔軟に設定でき、委託者の生前から効力を発揮します。

家族信託を活用することで、高齢のご家族の財産管理に関する将来的な不安を軽減することができます。また、生前からご家族や承継者と財産について話し合うため、ご本人の死後に揉めることなく財産が承継されることも期待できます。

家族信託が良く使われるケース

家族信託は、以下のようなケースで使用されます。

ケース1:不動産の名義が共有名義になっている場合

不動産が共有名義だと、以下のような問題が発生し、共有名義者間でトラブルとなることがあります。

  • 不動産の売却や立て替えには持分権利者全員の同意が必要であるにもかかわらず、持分名義者の一人に反対され、手続きが進まない。
  • 持分権利者の中の1人が認知症になってしまい手続きが進まない。
  • 世代が代わるにつれて不動産の持分権利者が増え、スムーズに意思決定ができない。

家族信託を活用すれば、持分権利者の1人を受託者にして管理を任せることができます。家賃収入などの利益に関しては持分権利者全員で分配するという契約を設定することで、他の持分権利者からの不満も軽減することが期待できます。

ケース2:高齢の経営者が後継者に経営を任せる場合

家族信託を活用すれば、高齢の経営者が後継者に会社の経営を任せ、株の配当だけ受け取るという設定が可能です。

上記の場合、現経営者が委託者兼受益者となり、後継者を受託者とします。

第二受益者に現経営者の配偶者を設定しておけば、現経営者の死後は、株の配当を配偶者が受け取りできるようにすることが可能です。また、受益者指定権と変更権を現経営者に持たせることで、後継者が適切でないと判断した場合には別の後継者を選択できます。

家族信託を活用することで、会社経営と自身の老後、自身が亡くなった後の心配事を軽減することができます。

ケース3:土地を将来的に孫に承継したい場合

本人が保有する土地を、「孫の成人のお祝い」など決まったタイミングに渡したいという場合も家族信託を活用することができます。

本人を委託者、子供を受託者、孫を受益者とし、信託契約で孫に土地を渡すタイミングを設定します。家族信託を活用することで、本人が将来認知症になった場合も、孫の成人時に土地を渡すことができます。

このように、家族信託を活用することで財産の柔軟な承継が可能です。

家族信託のメリットとデメリットを比較

家族信託は、財産管理や資産承継の新しい選択肢として注目を集めています。高齢化社会の進展に伴い、認知症対策や円滑な世代間の資産移転のニーズが高まる中、家族信託は従来の方法にはない柔軟性を提供します。しかし、その仕組みには長所短所があり、導入を検討する際は慎重な判断が求められます。

ここでは、家族信託のメリットとデメリットについて解説しています。

家族信託のメリット4選

家族信託には、従来の資産管理や相続の方法では対応しきれなかった課題を解決できる可能性があります。特に、委託者の意思を尊重しつつ、柔軟な資産管理を実現できる点が大きな魅力となっています。以下に、家族信託の主要なメリットを4つ挙げ、詳しく説明します。

1.委託者の認知症対応策に活用できる

委託者に指定された第三者が本人の生前から財産を管理をすることで、委託者が認知症になった際の資産凍結を回避することができます。

2.信託契約できる資産の幅が広い

一般的に銀行や信託会社が受託者となる商事信託の場合、預かることのできる資産が限られています。いっぽう家族信託は、不動産、有価証券、ペット、上場株式、非上場株式、貴金属、知的財産権など幅広い財産を信託財産として管理することができます。

3.世代を超えて継承者を選択できる

家族信託の受託者になれる人に制限はなく、子供だけでなく孫や甥姪なども受託者とすることができます。また、親族だけでなく弁護士や内縁関係の人などの第三者や、法人であっても要件をクリアできれば受託者になることができます。

4.遺言の代用となる

家族信託ではあらかじめ帰属権利者を指定しておくことが可能です。帰属権利者を指定することで、委託者が亡くなった際に財産を帰属権利者に渡すことができます。

家族信託のデメリット4選

家族信託は多くの利点を持つ一方で、いくつかの制約や注意点もあります。これらのデメリットを十分に理解したうえで検討することが重要です。ここでは、家族信託を検討する際に考慮すべき4つの主要なデメリットについて解説します。

1.家族信託を締結できないケースや信託財産に含むことができないものがある

信託契約をしようとしている人が認知症などで意思能力を失ってしまった場合は、信託契約を結べなくなります。また、農地、年金受給権、身上監護等は信託財産に含めることができません。

2.遺留分に注意が必要

信託契約も遺留分請求の対象となります。家族信託で財産を承継する場合でも、遺留分請求される可能性があるため、家族信託を契約する際は遺留分に注意する必要があります。

3.同じ信託契約以外の所得と損益通算ができない

複数の収益がある場合、家族信託を契約した収益と家族信託を契約していない収益は損益通算ができません。また、家族信託で信託契約されている収益同士も契約が言葉流場合は損益通算不可です。家族信託における信託財産は他の事業所得や給与所得とも損益通算ができないため、注意が必要です。

信託財産と個人財産の損益通算

4.信託契約の締結に費用が必要

家族信託の契約には、専門家へのコンサルティング費用、公正証書作成費用、不動産登記費用、不動産の信託登記にかかる登録免許税などの費用が必要となります。

遺言信託と家族信託の違い

遺言信託と家族信託は似たようなイメージを持たれることも多いですが、その内容は似て非なるものです。それぞれの内容を理解せずに契約すると、のちに大きなトラブルに繋がる可能性があります。また、途中で契約したことを後悔しないためにも、それぞれの違いについてしっかりと理解しておきましょう。

遺言信託とは?金融機関が遺言状に基づきの財産分与を実施

まず、遺言信託は金融機関が取り扱うサービスで、金融機関が遺言書の作成、保管、執行を一貫して行うものです。財産を死後にどう分配するかを決めるための制度です。

金融機関が、契約をした本人が亡くなるまで遺言書を預かるため、紛失や改ざんの恐れがなく安心な反面、初期手数料や保存期間中の保管料がかかります。

また、遺言信託の場合、契約をする本人の意思だけで契約を成立させることができます。

家族信託は存命中から効力を発揮

いっぽう、家族信託は自分以外の第三者を受託者とし、存命中から財産の管理、運用、処分などの財産管理を受託者に任せるための制度です。基本的には信頼できる家族が受託者となることが多く、その場合、保管料はかかりません。ただし、契約書を作成する際の専門家への報酬などが必要となります。

また、家族信託の場合、契約には委託者、受託者、受益者の同意が必要となります。

上述のとおり、遺言信託と家族信託は、本人が亡くなってから効力を発揮するのか、それとも存命中から効力を発揮するのかという点からもわかるように、違う制度です。

契約をする前にしっかりと理解したうえで契約するようにしましょう。

まとめ

家族信託は遺言信託と違い、委託者の存命中から効力を発揮するため、親の認知症対策などに活用されています。

近年、高齢者における認知症の割合は増加しており、厚労省によると平成24年(2012年)の時点で高齢者の約6人に1人が認知症とされています。また、令和32年(2050年)には高齢者の約4人に1人が認知症になるとの試算です。

認知症になる高齢者が増えていくような状況において、認知症対策として柔軟な設定ができる家族信託はますます注目されるでしょう。

ただし、家族信託は柔軟に信託契約を結ぶことができる反面、契約の不備が思わぬトラブルに繋がる可能性もあります。契約書を作成するには、法律や財務の知識を持った専門家に相談することをおすすめします。

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投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。

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家族信託とは、財産を持つ人(委託者)が信頼できる家族(受託者)に財産を託し、その管理や運用を任せる制度です。受託者は委託者の意向に従って財産を管理し、利益を受け取る人(受益者)に配分します。認知症対策や相続対策としてよく利用され、財産凍結を防ぎ、柔軟な財産管理が可能です。

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