専門用語解説
CET1比率
CET1比率(Common Equity Tier 1比率)とは、銀行がどれだけ質の高い自己資本を保有しているかを示す中核的な財務指標です。「普通株式等Tier1比率」や「コア資本比率」とも呼ばれ、自己資本のなかでももっとも損失吸収力の高い「普通株式」や「利益剰余金」などを、銀行が保有するリスク資産(与信、マーケット、オペレーショナルリスクなど)に対する割合で表します。
この比率が高いほど、銀行は突発的な損失への耐性が強く、金融ショック時でも倒れにくい“体力のある金融機関”と評価されます。CET1比率は、国際的な銀行規制であるバーゼルIIIの中核項目であり、各国の監督当局が定める最低基準(たとえば日本では4.5%+α)を常に上回る水準を維持することが求められています。
特に、グローバルに展開する大手銀行(G-SIBs)には、さらに高いCET1比率の維持が義務づけられており、その水準は信用格付けや資金調達コスト、金融商品設計にも影響を与えます。
投資家や預金者にとってCET1比率は、表面的な利益よりもはるかに重要な「金融機関の安全性」を示す指標です。ハイブリッド債や劣後債、AT1債などのリスク資本商品に投資する際には、発行体のCET1比率が十分かどうかを確認することが、リスク管理の基本となります。