専門用語解説
元本削減条項
元本削減条項とは、特定の条件が発生した場合に、債券の元本が一部または全部カット(減額)される可能性があると契約上あらかじめ定められている条項のことです。主に、金融機関が発行するハイブリッド債や劣後債など、リスクの高い債券に組み込まれることが多い特徴があります。
この条項が発動される代表的なケースとしては、発行体の財務健全性が著しく悪化したときや、自己資本比率が一定の水準を下回ったときなどが挙げられます。たとえば、銀行などが経営危機に陥った際、返済負担を軽減し、倒産を回避するために投資家の元本を削減して資本に振り替えるという形で行使されることがあります。
発行体にとっては経営安定化の手段となりますが、投資家にとっては元本を失うという重大なリスクであり、利回りの高さの裏に潜む“見えにくいコスト”とも言えます。
とくにAT1債(Additional Tier 1債)のように、元本削減条項とコール条項が組み合わされた複雑な商品では、契約内容を読み解く力が求められます。こうした債券への投資を検討する際は、発行体の財務状況や条項の発動条件を十分に確認し、リスクを正しく理解したうえで判断することが不可欠です。